1987 年 19 巻 5 号 p. 616-621
心臓に原発する悪性腫瘍は,極めて少なく剖検で確診がつく症例がほとんどである.最近我々は,心外膜原発の血管肉腫の1例を経験した.症例は54歳女性,呼吸困難を訴え入院し,胸部X線写真では心拡大著明,心電図では低電位を認め,CT,心エコーにより悪性腫瘍も疑われたが,血性心嚢液貯留による心タンポナーデを繰り返したため心膜開窓術を施行したが,3カ月後に死亡した.剖検にて,腫瘍は心外膜全体に散在し,右房右室壁へも浸潤,肝,脾,肺,骨髄,右卵巣に転移しており,組織学的には心外膜原発と思われる血管肉腫であった.
本邦では自験例も含めて,心臓原発血管肉腫の報告例は1986年まで23例であり,心外膜原発は4例であった.これら23例につき検討を加え報告する.