心臓
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症例 人工ペースメーカーにて失神発作を抑制しえなかったcarotid sinus syndromeの1例
超音波法による発作時循環動態の検討
林 英宰千田 彰一森田 久樹水重 克文中島 茂深田 英利平林 浩一松尾 裕英
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1987 年 19 巻 7 号 p. 882-887

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抄録
人工ペーシングにより血圧維持不能であったcarotid sinus syndromeの1例において,その循環動態を超音波法,心カテーテル法により検討したので報告する.
症例:65歳,男,上咽頭腫瘍切除術,放射線療法後,頻回の失神発作を繰り返し,心電図上洞停止が認められた.心室(VVI),心房(AAI)ペーシングを行ったが,両モード作動下においても頻回に血圧低下,失神発作を来した.自律神経機能検査では,眼球圧迫試験,頸動脈洞圧迫試験にて再現性良く同様の血圧低下,失神発作が誘発され,その発作中にドプラ心エコー法による左室流入血流パターンから算出した心拍出量は,非発作時に比し低下しておらず,左室壁運動にも変化はなかった.Swan-Gantzカテーテルを挿入して,熱稀釈法により頸動脈洞圧迫時の心拍出量を測定したが,血圧低下時にも心拍出量は低下しておらず,ドプラ法により算出された結果と同様の結果を得た.Overdrive suppression testにてSRTの延長を認めたが,His束心電図は正常であった.冠動脈造影にて冠動脈に有意な狭窄病変を認めなかった.本例の血圧低下は,心拍出量の減少よりも副交感神経の異常緊張による体血管抵抗の減少が主な原因と考えられ,vasodepressiv eeffect優位のcarotid sinus syndromeと診断された.人工ペーシングに加え血管収縮剤の投与により血圧低下は抑制された.
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