心臓
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臨床 心室中隔欠損症の乳児期根治手術
最近の連続手術成功例35例について
羽根田 潔石沢 栄次新井 悟八巻 重雄伊藤 孝鈴木 康之堀内 藤吾
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1988 年 20 巻 4 号 p. 429-433

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抄録
1961年以来,心室中隔欠損症(VSD)に対する乳児期(12カ月未満)閉鎖術を162例に行ってきたが,手術成績はしだいに向上し,1982年6月以来の35例を全例救命することができた.
症例は男17例,女18例で手術時月齢は平均7.1カ月(1~11カ月),手術時体重は平均5 .3kg(3. 5~8. 2kg)であり,80%の痺例は発育曲線上3パーセンタイル以下の高度の発育障害を示した.術前の血行動態では,肺対体血圧比0. 79±0.15,肺対体血管抵抗比0.30±0.16,肺血管抵抗3.2±2.1 unit.m2,肺対体血流比2.5±0.6であった.動脈管開存症9例,心房中隔欠損症3例,肺動脈弁狭窄症1例の合併をみた.手術は,25例で単純低体温と体外循環とを併用した超低体温,完全循環遮断下にVSD閉鎖を行い,他の10例では体外循環のみで,循環遮断を行わずに閉鎖した.
術後にDIC,腎不全,空気塞栓などの合併症の発生をみたものの,全例救命することができた.ただし,1例を遠隔期に肺炎で失った. 肺動脈圧は術後著明に低下し,肺対体血圧比0.38±0.12であった.また術後の精神・身体発達係数は術前に比し有意差はなく,循環遮断による影響はみられなかった. 術後の体重増加も良好で,平均2年間の経過観察で62%の症例は,発育曲線上10パーセンタイル以上へと良好な発育を示した.
乳児期VSD閉鎖術の成績は著明に向上し,その有用性が確認された.積極的に早期根治手術を行って行く方針である.
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