抄録
心不全で発症した心臓原発の悪性線維性組織球腫(malignant fibrous histiocytoma;MFH)の1例を経験した.心タンポナーデの解除により一時的に小康を得たが放射線療法,化学療法の効果なく呼吸困難が進行し,発症8カ月,入院6カ月で死亡した.生前の検査では,血性心嚢液の細胞診はClass IIIで,心エコー検査では左房内に広基性に突出した固定性の腫瘤が内腔を占拠し,大動脈を前方に圧排していた.剖検では,腫瘍は心基部を中心に広範にひろがり左室心外膜下に浸潤し,病理組織学的にMFHと診断された.文献的考察を加え報告する.