抄録
近年,超音波パルス・ドプラー法によって弁膜疾患の逆流度評価を非侵襲的に行う試みがなされている.今回,我々は大動脈弁閉鎖不全症においてカラー・ドプラー法にて認められた弁上部吸い込み流れ血流(suction signal)を検索し他の重症度評価との対応について検討した.Suctionsignalはカラー・ドプラー法にて大動脈弁逆流シグナルの認められた47例中20例に検出された.S秘ctionsigna1の検出によって,III/IV以上の大動脈弁逆流を診断するsensitivityは100%, speciflcityは64%, predictive accuracyは67%であった.また,逆流点に向かうV字状のsuctionsignalは,逆流口の同定に有用と考えられた.長軸像で計測されたsuctionsignalの面積は,左室内逆流血流シグナルの面積と有意な相関を示し,大動脈造影およびパルス・ドプラー法での腹部大動脈血流パターンによる重症度に準じて大となる傾向を認めた.suctionsignalの面積が40mm2以上でIII/IV以上の高度逆流を診断するsensitivity88%, specificity91%, predictiveaccuracy88%であった.すなわち,suctionsignalの広がりは大動脈弁閉鎖不全症重症度評価の一指標になり得ると考えられた.