抄録
肥大型心筋症における心筋組織性状の評価が磁気共鳴画像(MRI)を用いて行えるか,特に肥大心筋の心内膜側を中心として出現する高信号領域の臨床的意義,およびMRI造影剤であるGd-DTPAを用いて肥大心筋に造影効果が認められるか検討した.用いた装置はMagnetom H15 (1.5 Tesla,超電導型)で心電図同期スピンエコー法(SE600~1000/30, 70)を使用した.対象は肥大型心筋症32例および高血圧心30例である.肥大型心筋症12例(38%),高血圧心5例(17%)に肥厚部位およびその心内膜側に高信号領域の出現を,明瞭に認めた.心エコー図諸値と対比すると心筋壁厚の厚い症例に頻度が高かった.次に肥大型心筋症8例,高血圧心8例にてGd-DTPAO.1mM/kg静注後,16例中10例(63%)に造影効果を認めた.肥大心筋の心内膜側を中心とする高信号領域の出現は,MRI造影剤による造影効果と併せ考察すると,麗大型心筋症に特徴的といえないが心筋肥大に伴う心筋変性を表現している可能性が示唆された.現時点でMRIを用いて肥大型心筋症と高血圧心の心筋性状の鑑別は明瞭でないが,肥大心筋の性状について他の検査法とは異なった診断情報を提供する可能性が示唆された.