抄録
症例は19歳男性.昭和62年8月15日午後1時より動悸を自覚.近医を受診し頸動脈洞マッサージ,眼球圧迫等施行されるも効なく,徐々に呼吸困難増強のため,同日午後8時30 分当院受診.来院時起坐呼吸で淡赤色泡沫状疾を喀出.頸脈脈怒張(血圧110/60mmHg,心電図は心拍238/分)の発作性上室性頻拍(以下PSVTと略す)を示した.胸部X線像は心胸比53.5%,肺水腫の所見を認めた.PSVTに対しプロカインアミド,ベラパミールを使用するも不応のため,DC100J施行し洞調律に回復.心電図はAtypeWPW症候群を示した.心エコーにて大動脈弁右冠尖逸脱,僧帽弁逸脱,左室腔拡大,左室壁運動低下を認めた.心臓カテーテル検査でARSellersII度を認め,EF62%と軽度低下,201T1・心筋シンチグラムにて前壁部限局性集積低下を認めた.大動脈弁逸脱,僧帽弁逸脱,左室壁運動低下,WPW症候群によるHR238/分という著明なPSVTのコンビネーションにより急性肺水腫をきたしたと思われ,またこれらの病因を考える時,一連の関連が示唆され興味深い症例と考えられた.