心臓
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症例 右胸心を合併した高齢者Lutembacher症候群の1手術治験例
松倉 徹横田 名慈中川 浩司富川 雅仁堀江 博夫柳沢 厚生岡田 道雄田原 稔外山 雅章石川 恭三
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1989 年 21 巻 5 号 p. 586-591

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抄録
右胸心を合併したLutembacher症候群の高齢者手術治療例を経験した.症例は51歳男性で生下時より心疾患を指摘されていた.昭和54年よりうっ血性心不全,心房細動,僧帽弁狭窄症と診断され治療を受けていた.昭和61年!2月に呼吸困難を主訴に当院入院となった.身体所見上,か波増高を伴う頸静脈怒張,両肺野の湿性ラ音,1音の充進と幅広いII音の固定性分裂,駆出性収縮期雑音と拡張期ランブルを認めたが,僧帽弁開放音は聴取しなかった.胸部X線写真と心電図で右胸心と右室肥大を認めた.断層心エコー図で心房中隔に欠損孔を認め,僧帽弁後尖付着部は乳頭筋とともに心室壁に埋没し,同部位の開放が制限されていた.腹部CT像では内臓錯位と多脾症の合併を認めた.以上の所見と心臓カテーテル検査から右胸心(mirror-imagedextrocardia),二次孔心房中隔欠損症,軽症先天性僧帽弁狭窄症および三尖弁閉鎖不全症と診断し,昭和62年4月9日にASDパッチ閉鎖術,三尖弁の弁輪形成術を施行した.術中の心房中隔欠損孔より観察した僧帽弁尖に明らかなリウマチ様変化は認められなかった.術後の経過は良好で,現在外来通院中である.過去に右胸心とLutembacher症候群の合併奇形の報告はなく,また高齢者手術例でもあり報告した.
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