抄録
Rendu-Osler-Weber病は内外に多く報告されているが,肺および肝の両方に動静脈痩を伴うものは極めてまれである.患者は46歳家婦,主訴は労作時の動摩および息切れ.身体所見上,舌と爪床に点状出血,鼻粘膜に毛細血管拡張症,手指にバチ状指を認め,第4肋間胸骨右および左縁に収縮期雑音,右季肋部に血管性雑音を聴取する.患者,長女および兄が鼻出血を訴え,鼻粘膜の毛細血管拡張症によるものと判明した.胸部X線正面像にて心右縁に二重陰影を,側面像にて心陰影後縁と胸椎の間に卵円形の陰影を認め,X線CT,肺動脈造影などよりA10,V10をそれぞれfeedingartery,drainageveinとする肺動静脈痩と診断.心臓カテーテル検査にて右肺動脈一肺動脈幹に圧較差を,また,右房および肝静脈開口部のレベルにて酸素飽和度の上昇を認め,X線CT,血管造影などの検査にて肝全体のび漫性の動静脈短絡と診断された.核医学検査により,肺動静脈痩による右左短絡率は約10%と推定,固有肝動脈より肝に流入する血液の左一右短絡率は70%と計測された.治療については,患者が希望しない,症状がNYHAの心機能分類I度と軽度である,動静脈痩の切除あるいは動脈塞栓術後に新たな動静脈痩が発生する可能性があるなどより外科的治療は行わず,内科的に経過観察を行っている.