抄録
体内式自動除細動器(AICD)は,薬剤抵抗性心室性頻拍・細動の治療法として開発され,近年臨床応用が可能となった。しかし完成された装置ではなく,解決すべき問題点が残されている.症例は陳旧性前壁中隔心筋梗塞症で,心室瘤を有する58歳の男性.動悸を主訴として来院した.症候性心室頻拍を認め,種々の抗不整脈薬を投与したが,消失しなかった.薬剤抵抗性の心室頻拍と判断し,心外膜マッピングでの最早期興奮部位に対応する心内膜切除術および心室瘤切除術を行い,AICDを植え込んだ.術後プログラム電気刺激法で誘発された非持続性心室頻拍に対してAICDの誤放電が認められた.また合併症として,腕頭静脈結紮による右上肢浮腫,本体植え込み部皮膚の圧迫壊死,長期間の胸水貯留,スプリング電極の降下が認められた.AICDの有用性は確立されつつあるが,その適応と使用には十分注意する必要があると思われた.