抄録
47歳女性で,房室結節回帰性頻拍が増悪してきた1症例に対して,直達外科治療を行った.手術では,Rossらの術式に従って,完全体外循環下に頻拍を誘発して心内膜マッピングを行い,心房の最早期興奮部位をKoch三角の頂点に検出した.そこで,心停止下に房室結節を心内膜・心房中隔・Todaro索より剥離するようにし,最後にTodaro索の切断を行った.その結果,いわゆるFastpathwayによる房室伝導を温存しつつ,いわゆるSlowpathwayの伝導能を低下させ,臨床的に頻拍の消失をみた.本例は,本邦初の成功例であった.これにより,房室結節回帰性頻拍が,Rossらの手術により治癒し得る疾患であることを確認し,不整脈外科の適応・限界をより拡大した.