心臓
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症例 徐脈依存性に心房内の伝導遅延を認めた洞不全症候群の1例
佐藤 正鈴木 文男大友 建一郎山本 直人平尾 見三比江嶋 一昌
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1990 年 22 巻 11 号 p. 1309-1316

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抄録

症例は,83歳の女性.昭和63年10月,失神発作出現したため,同年12月,精査目的に入院となる.入院時の12誘導心電図では,徐脈を示し,P波は間隔が不安定かつ低電位であり,洞性P波の同定は困難であった.入院後に施行した電気生理学的検査では,最長洞結節回復時間は4.2秒,修正洞結節回復時間は2.7秒であった.また高位右房電位記録(HRA)に電位の分裂を認めた. HRAより心房早期刺激(基本周期1,200msec)を行った.連結期(S1S2間隔)を短縮させて行った際,期外収縮一HRA電位間隔(S2-HRA2)は,連結期の短縮とともに短縮するという奇異な現象が観察された.すなわち,S1S2=1,200,1,000および900-440msecの時には, S2HRA2間隔は,各々95,70,65-55 msec(900-650msec:65 msec;560,600 msec:55 msec;他の連結期の時:60msec)であった.しかしS1S2<440msecにおいては再びS2-HRA2間隔が延長した.同様の所見は,HRAからのconstant pacingの際にも認められた.すなわち,ペーシング周期(PCL)=1,200,1,100,1,000msecにおいては, S-HRA=95,85,70msecであったが, PCL=800,700,600 msecでは,S-HRA=65,60,55 msecと短縮した.以上の所見は,いわゆる徐脈依存性ブロックないしは伝導遅延に合致する所見であると考えられた.ただし他の心房部位(外側下位右房)からの刺激では,このような所見は見られなかった.心房内での徐脈依存性伝導遅延を確認しえたとする報告は我々の知る限りではないので若干の文献的考察を加えて報告する.

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