心臓
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症例 非リウマチ性僧帽弁狭窄を合併したLutembacher症候群の1手術例
術中経食道ドプラ断層評価が有効であった症例
許 俊鋭北条 浩松村 誠横手 祐二木村 壮介元山 猛土肥 豊尾本 良三
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1991 年 23 巻 11 号 p. 1254-1257

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抄録

Lutembacher症候群として最初に報告された症例は,心房中隔欠損(ASD)と先天性僧帽弁狭窄(MS)の合併例であったが,その後諸家により後天性リウマチ性MSとの合併例にまで定義が拡大されて報告されてきた.我々は比較的まれな非リウマチ性のMSとASDの合併した狭義のLutembacher症候群の1例を経験したので報告する.症例は39歳男子で10歳時より心雑音を指摘されていた.リウマチ熱の既往歴はなく,入院時NYHA3度であった.心胸郭比78%,心電図上心房細動および不完全右脚ブwック所見が見られた.肺動脈圧は77/20mmHgと高度の肺高血圧を示し,左右短絡=66.3%,右左短絡=7.7%であり(表1),SellersI度の僧帽弁逆流と高度の三尖弁逆流が認められた.手術所見で僧帽弁は弁尖の狭窄性病変よりも弁輪そのものが狭く後乳頭筋の左室後壁よりの突出著しいため,十分なサイズの人工弁の挿入は困難と考えられ,29mmの僧帽弁サイザーが挿入可能となるまでサイザーによる拡張を行った.術中ドプラ断層検査では,僧帽弁口面積はO.95cm2より1.3cm2と改善を見,術後10日目には1.6cm2と術直後と比較してさらに改善を見た.術後1年目には心胸比52%まで著明に縮小し正常な社会生活をおくっている.手術時のMSに対する治療方針の決定およびその評価に経食道ドプラ断層が有効と考えられたので報告する.

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