心臓
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23 巻, 11 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 吉田 哲, 野村 真一, 長谷川 義武, 松原 由朗, 石原 正人, 永井 弘, 三ツ口 文寛, 安保 泰宏, 中野 博, 勅使河原 敬明, ...
    1991 年 23 巻 11 号 p. 1211-1219
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Anaerobic threshold(AT)を指標として評価した心筋梗塞患者の運動耐容能が,いかなる因子によって規定されているのかを検討した.急性心筋梗塞発症1カ月後の男性患者40例(平均年齢57±10歳)を対象に,心肺運動試験,冠動脈造影および左室造影,体表面電位図記録を施行した.心肺運動試験は座位自転車エルゴメーターを用い,ランプ法により症状制約方式で行った.同時に呼気ガス分析器を用いて30秒間隔で酸素摂取量(VO2),分時換気量(VE)を測定し,VE/VO2が定常期から上昇期に移行する時点をATと決定した.NYHAの心機能分類1度からIII度へと重症化するにつれて,ATは有意に低下した.ATと安静時左室駆出分画の間には有意な相関を認めなかった.ATと体表面電位図より求めた梗塞量(departure area)の間にも有意な相関を認めなかった.前壁梗塞群と下壁梗塞群との間にはATに関して有意差を認めなかった.多枝病変群は1枝病変群に比してATが有意に低値であった.運動試験でのST下降群はST不変群,ST上昇群に比してATが有意に低値であった.すなわち,運動による新たなる虚血領域の出現が運動耐容能を低下させる1因子であることが示唆された.運動試験中の最高心拍数とATの間には比較的良い正相関が認められた.以上,心筋梗塞患者の運動耐容能は罹患冠動脈枝数,運動による新たなる虚血領域出現の有無,運動時の最高心拍数により規定されると結論した.
  • 伊東 春樹
    1991 年 23 巻 11 号 p. 1220-1222
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 超音波ドプラー法による検討
    野崎 士郎, 森田 久樹, 水重 克文, 大森 浩二, 山田 義夫, 松尾 裕英
    1991 年 23 巻 11 号 p. 1223-1230
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    大動脈弁閉鎖不全症22例において,大動脈弁逆流弁口面積をドプラー心エコー法を用いて計測し,大動脈弁逆流量の規定因子としての逆流弁口面積の意義について検討した.また,カラードプラー法による逆流弁口面積の計測を試み,その妥当性について検討した.大動脈弁逆流量は,パルスドプラー法を用いて計測した左室駆出血流量と左室流入血流量との差より求めた.逆流弁口面積は,逆流量を連続波ドプラー法を用いて計測した逆流血流速度の時間積分値で除することにより求めた.カラードプラー法による逆流弁口面積の評価は,大動脈弁口部短軸断面像で得られた逆流映像の最小断面積より行った.大動脈弁逆流弁口面積は,O.05-O.35cm2の範囲を示し,カラードプラー法で計測した最小短軸断面積と良好な相関を示した.逆流量は逆流弁口面積との間に強い相関を示した(r=0.88,p<O.OO1)が,逆流持続時間と拡張期大動脈一左室問圧較差に規定される逆流血流速度の時間積分値との相関は粗であった(r=O.45,p<O.05).以上より,ドプラー心エコー法を用いた大動脈逆流量および逆流弁口面積の計測から,大動脈弁逆流弁口面積は逆流量を規定する重要な因子であることが示された.さらに,カラードプラー法を用いて大動脈弁逆流弁口面積を評価し得る可能性が示唆された.
  • 大竹 裕志, 渡辺 剛, 高橋 英雄, 坪田 誠, 松永 康弘, 向井 恵一, 三崎 拓郎, 渡辺 洋宇, 岩 喬
    1991 年 23 巻 11 号 p. 1231-1237
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    近年,不整脈外科領域において,laser ablationの臨床応用が報告されている.しかし,本法は,心筋破裂や穿孔といった致命的な合併症を引き起こす危険性がある.より安全かつ正確な照射を施行するため,著者らは,従来の非接触法,接触法,さらに独自に開発したプローブを用いた照射法(新型法)の3種の照射方法の正確さおよび安全性について,比較検討を行った.対象は雑種成犬30頭,左心室自由壁の12カ所に照射部位を設定した.レーザー装置はSLT Japan社製CL50型Nb-YAGレーザーを用いた.新型プローブは塩化ビニール製の中空の筒であり先端をポリ塩化ビリニデンフィルムで覆い,内部を0℃ 生食水で灌流した, 病理組織学的には,非i接触群と新型群とでは明らかな違いはなく,接触群にのみ組織欠損が認められた.同一照射エネルギーにおける照射心筋容積値を比較すると,接触法は非接触法,新型法に比し照射容積が有意に小であった.また,非接触法と新型群とで比較したところ,平均照射容積値に有意差はなかった.しかし,測定値のばらつきを比較すると,非接触法は新型法に比し有意にばらつきが大であった.以上より,接触法は,非接触法に比しエネルギー効率が悪く,破裂穿孔の危険性も高いため,1aser ablationには不適と考えられた.また,新型法は非接触法と同様の焼灼が可能であり,よりばらつきの少ない正確かつ安全なlaser ablationが可能であった.
  • 田村 明紀, 浜重 直久, 土居 義典, 米沢 嘉啓, 楠目 修, 小田原 弘明, 小澤 利男, 赤木 直樹, 吉田 祥二, 前田 知穂
    1991 年 23 巻 11 号 p. 1238-1244
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Treadmil1負荷心電図で有意のST下降を認めなかった非梗塞例90例について,dipyridamole負荷心筋シンチ・冠動脈造影・心合併症などを検討し,陰性負荷心電図の信頼性やdipyridamole負荷心筋シンチの意義について考察した.BruceII度(6分)以内に負荷を終了した48例中,14例(29%)がdipyridamole負荷心筋シンチ陽性であり,うち93%に有意冠動脈病変・43%に多枝病変・38%に心合併症を認めたが,同心筋シンチ陰性の34例中では,それぞれ6%・0%・6%のみであった.Brucell度を超える負荷が可能であった42例中では,12%に有意病変,2%に多枝病変,2%に心合併症を認めるのみであった.以上,運動負荷心電図陰性例のうち,BruceII度以内の負荷例では,偽陰性所見も少なくなく,一部では負荷が不十分なこともその一因と考えられた.こうした症例に対する有意冠動脈病変の検出には,dipyridamole負荷心筋シンチが有用と思われた.
  • 佐藤 洋, 滝澤 明憲, 山本 一博, 玄 武司, 鈴木 秀樹, 木下 勝就, 正田 栄, 永尾 正男
    1991 年 23 巻 11 号 p. 1245-1253
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    完全,亜完全閉塞病変に対するPTCAは技術的に難度が高く,成功率も低い。高度の狭窄病変を有する症例の中には,診断的冠動脈造影時には開通しているが,PTCA施行時までの短期間に無症候性に閉塞し,PTCAが不可能か,不成功に終わる症例もしばしば経験される.我々は1984年から1989年までの5年間に,診断的冠動脈造影にて90%を越える高度の狭窄病変を有し,PTCAの適応とされた99例について,冠閉塞の頻度,時期と閉塞に寄与する臨床,血管造影上の因子を検討した.造影遅延のない63病変(ND群)では1年以内に閉塞したのはわずか3病変(4.7%)であったが,軽度の造影遅延を有する20病変(MD群)では4病変(20.0%),高度の造影遅延を有する24病変(SD群)では9病変(37.5%)が閉塞した.冠閉塞への進行には造影遅延の有無で有意差があり(p<0.05),遅延が高度なほど閉塞率が高い傾向にあった.診断的冠動脈造影時からPTCA施行時までの期間については,ND群では6週以内に閉塞した例はなく,10週まででも1例のみであった.MD群では6から10週までに2例(13.3%)が閉塞し,またSD群では2週以内から閉塞例を認めた.次に,造影遅延を有する群にて,冠閉塞に寄与する因子を検討すると,β- 遮断薬使用,安静型狭心症,高度造影遅延などが閉塞と相関した.病変に造影遅延を認めた場合,遅延が軽度であれば1,2カ月,高度であればより早期に閉塞する危険性が高いと考えられた.
  • 術中経食道ドプラ断層評価が有効であった症例
    許 俊鋭, 北条 浩, 松村 誠, 横手 祐二, 木村 壮介, 元山 猛, 土肥 豊, 尾本 良三
    1991 年 23 巻 11 号 p. 1254-1257
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Lutembacher症候群として最初に報告された症例は,心房中隔欠損(ASD)と先天性僧帽弁狭窄(MS)の合併例であったが,その後諸家により後天性リウマチ性MSとの合併例にまで定義が拡大されて報告されてきた.我々は比較的まれな非リウマチ性のMSとASDの合併した狭義のLutembacher症候群の1例を経験したので報告する.症例は39歳男子で10歳時より心雑音を指摘されていた.リウマチ熱の既往歴はなく,入院時NYHA3度であった.心胸郭比78%,心電図上心房細動および不完全右脚ブwック所見が見られた.肺動脈圧は77/20mmHgと高度の肺高血圧を示し,左右短絡=66.3%,右左短絡=7.7%であり(表1),SellersI度の僧帽弁逆流と高度の三尖弁逆流が認められた.手術所見で僧帽弁は弁尖の狭窄性病変よりも弁輪そのものが狭く後乳頭筋の左室後壁よりの突出著しいため,十分なサイズの人工弁の挿入は困難と考えられ,29mmの僧帽弁サイザーが挿入可能となるまでサイザーによる拡張を行った.術中ドプラ断層検査では,僧帽弁口面積はO.95cm2より1.3cm2と改善を見,術後10日目には1.6cm2と術直後と比較してさらに改善を見た.術後1年目には心胸比52%まで著明に縮小し正常な社会生活をおくっている.手術時のMSに対する治療方針の決定およびその評価に経食道ドプラ断層が有効と考えられたので報告する.
  • 金沢 郁夫, 榎野 新, 石橋 克彦, 小園 亮次, 藤井 秀昭, 丸橋 暉, 森田 悟, 前田 佳之
    1991 年 23 巻 11 号 p. 1258-1262
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    先天性冠動脈肺動脈痩を両側冠動脈に認め,痩血管が嚢状動脈瘤を呈し,さらに心筋梗塞を合併するとともに,痩血管を分岐する枝の末梢に有意狭窄をもつ例は極めてまれと思われる.
    症例は62歳男性.急性心筋梗塞後に冠動脈造影を行い前下行枝の梗塞責任病変,回旋枝近位部の有意狭窄,回旋枝起始部および右冠動脈起始部から肺動脈へ注ぐ両側の動静脈痩を認め,左右痩血管が合流し肺動脈開口部付近で嚢状動脈瘤を呈す所見を認めた.MRI検査にて痩血管と嚢状動脈瘤を確認できた.また右心カテーテル検査にて,肺動脈主幹部の一部でO2 step-upを認めた.以上より,回旋枝領域の虚血の進行と嚢状痩血管の破裂の危険を考慮して,嚢状部の縫縮・閉鎖,痩開口部の閉鎖およびACバイパス術を行った.
    今後,冠動脈造影の普及および高齢化等による虚血性心疾患の増加とともに冠動脈痩に冠狭窄あるいは心筋梗塞を合併する例は増加すると思われるが,今回それらに痩血管の動脈瘤様拡張を呈したまれな症例を経験したので報告した.
  • 杉山 太枝子, 李 鍾大, 小川 一也, 清水 寛正, 久保田 直邦, 山本 雅之, 原 晃, 中村 徹
    1991 年 23 巻 11 号 p. 1263-1267
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    48歳男性. 安静時に,心電図II,HLaVF誘導のST上昇を伴う胸痛発作が頻発し,異型狭心症と診断.各種のCa拮抗剤,亜硝酸剤の投与によっても胸痛発作は消失せず,むしろ増悪した.nicorandil,交感神経α1受容体遮断剤,Mg剤,trihexyphenidyl HC1の投与も試みたが,無効であった.冠動脈造影上,左右冠動脈に有意狭窄は認めなかった.しかし,検査中に自然胸痛発作が出現し,右冠動脈中間部での完全閉塞を認めた.nitroglycerinの冠動脈内注入は無効であったが,norepinephrineの冠動脈内注入により冠攣縮が速やかに解除された.このことをヒントにβ1受容体刺激剤であるdenopamineを経口投与したところ,その後胸痛発作は劇的に消失した.冠攣縮と交感神経系の関連を明らかにする上で,興味深い症例と思われた.
  • 志水 正史, 田中 勧, 吉津 博, 羽鳥 信郎, 奥田 恵理哉, 瓜生 田曜造
    1991 年 23 巻 11 号 p. 1268-1272
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞後に出現する発熱・心外膜炎・胸膜炎・肺炎をDressler症候群と呼ぶが,今回,67歳女性の急性心筋梗塞後心室中隔穿孔の経過観察中にDressler症候群を併発,消炎剤およびステロイド剤による加療後中隔穿孔閉鎖術を施行し良好な結果を得たので若干の文献的考察を加え報告する.
  • 広川 淳一, 堀本 和志, 五十嵐 慶一, 竹中 孝, 俣野 順, 山城 勝重, 鈴木 頌
    1991 年 23 巻 11 号 p. 1273-1278
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    器質的冠狭窄のない肥大型非閉塞性心筋症に冠動脈内血栓による急性心筋梗塞を合併し,coronary intervention後に心破裂に陥った症例を報告する.55歳女性で,心エコー図にての非対称性中隔肥大と右室心筋生検による心筋細胞の錯綜配列所見より1985年に肥大型心筋症と診断された.1989年12月28日23時頃から胸痛が出現し,一時的に軽快したが翌29日7時30分に再び増強し,他院での心電図にて心房細動,V3-6のST低下と陰性T波を認めたため,前側壁の非貫壁性梗塞を疑われ,同日11時に当科に搬入された.緊急冠動脈造影にて左冠動脈回旋枝#13近位部に血栓性完全閉塞を認めた.冠動脈内血栓溶解療法により,その部は開通し器質狭窄を認めなかったが,遊離した血栓が末梢部を閉塞したため,経皮経管的冠動脈形成術を施行した.しかし回旋枝末梢部の再疎通は得られずinterventionを終了し,その30分後に心破裂にて死亡した.剖検にて左室後壁に貫壁性梗塞と筋層断裂を認め,組織学的には出血性梗塞像を呈していた.左室壁は全周性に肥厚し,心室中隔全体に心筋細胞の肥大と著明な錯綜配列を認めた.いずれの冠動脈にも器質狭窄はなく動脈硬化性病変に乏しく,回旋枝末梢の血管内腔には血栓を認めた.本症例における心筋梗塞の機序として,心房細動に伴う冠動脈血栓塞栓症あるいは冠攣縮に伴う血栓形成が推測されたが確定し得なかった.器質的冠狭窄のない肥大型心筋症に,冠内閉塞性血栓を証明した心筋梗塞の合併例はまれであり,その機序考察の点からも本症例は興味あるものと思われた.
  • 小野寺 正輝, 伊藤 明一, 小田倉 弘典, 酒井 寿郎, 八木 哲夫, 滑川 明男, 篠田 晋, 長島 道夫, 鈴木 彦之
    1991 年 23 巻 11 号 p. 1279-1284
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    臨床心臓電気生理学的検査(EPS)により潜在性WPW症候群(CWPW)と診断された56例(男33例,女23例,年齢43±18歳)を対象とし,房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)の合併を検討した. 左心側Kent束を有する2例(4%)でAVNRTが合併した.症例1.早期心室刺激時,Kent束を介する逆伝導がブロックされ,正常伝導路を介する逆伝導が出現し,非持続性稀有型AVNRTが誘発された.また高頻度心房刺激による房室リエントリー性頻拍誘発時,突然のA-H間隔の延長も認められた.症例2.房室リエントリー性頻拍中に,Kent束を介する逆伝導がブロックされ,房室リエントリー性頻拍が自然に停止した後,通常型AVNRTへ移行した.その機序として,二重房室結節伝導路を介した二重心室応答や補充収縮の関与が考えられた.難治性CWPWの副伝導路切断術に際しては,術前にAVNRTの合併についても十分な検討を加え,詳細なEPSを行うべきである.
  • 大貫 雅弘, 宮高 和彦, 東口 隆一, 坂口 泰弘, 中島 啓, 夫 彰啓, 山中 貴世, 辻本 正之
    1991 年 23 巻 11 号 p. 1285-1290
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    両室単極ペースメーカー(Siernens-Elema社製model 544) 植え込み4時間後の心電図で, 心房刺激によって心室が捕捉され, 無効の心室刺激がST部に重なっているのが見られた. 胸壁筋刺激と心房心室のundersensingが同時にみられ, 出力を下げるといずれも軽快した. しかしなお間欠的に見られるためVVImodeで経過観察し, 13日後にはDDD modeで正常に作動した. 本例では胸部X線写真上異常なく, 刺激出力の低下で軽快した, 副伝導路の関与がない, 本現象時の心房刺激によるQRS波形と正常作動時の心室刺激によるQRS波形が同じ, 自然軽快した等からペースメーカーの機構に起因した現象と考えられた. すなわち不関電極と患者の接触が滲出液や気泡の関与によって一時的に不良になったこと,Pulse generator 544の出力コンデンサーが10μF, 保護コンデンサー一が0.1μFと比較的大きいために抵抗が低く,電流が心房回路から心室回路に流れやすいこと, 術直後は心室閾値が極めて低いことが関与して, 心房刺激が心室を捕捉した一過性の現象であると思われた.
  • 長谷川 浩一, 沢山 俊民, 忠岡 信一郎, 田村 敬二, 田中 淳二, 鼠尾 祥三
    1991 年 23 巻 11 号 p. 1291-1297
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    ホルター心電図記録中に広範肺塞栓が発症し,心調律と心電図変化の経過がおえた症例を経験した.本症の心電図所見は多彩で,従来,洞頻脈,V1-3のT波陰転SIQ III T IIIパタンが重要視されているが,発症早期には突然の徐脈が生じ速やかに洞頻脈化すること,STがV5で下降,V1で上昇しうることが示された.これは,急激な右室拡張・内圧上昇の結果,vasovagal refiexを介し徐脈と体血圧下降を生じ,低酸素血症とあいまって左室の心内膜下虚血(V5のST下降)と右室の全層性虚血(V1のST上昇)が発生した可能性が考えられた.急死の一因ともなる本症発症時の心電図所見が得られたことは貴重と考え報告した.
  • 高橋 政夫, 向井 恵一, 榊原 直樹, 渡辺 剛, 田中 信行, 岩 喬
    1991 年 23 巻 11 号 p. 1298-1302
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    厳格な内科的療法によっても再発を繰り返した肺高血圧症を有する肺動脈血栓症例に対し,体外循環を用いて右肺動脈上中下葉分枝にまたがる血栓除去術を施行し,術後経過良好な症例を報告する.症例は58歳女性で,呼吸困難,右側胸部痛を主訴とし,機能分類ではNYHA第IV度であった.術前の肺血流シンチグラフィーで右肺上中葉に大きな欠損像および肺動脈造影では右肺動脈本幹に血栓陰影を認め,右肺動脈血栓症と診断された.第1回の肺血栓より抗凝固療法が約半年間施行されたが,第2回の再発が出現し前記症状は増悪したため,手術適応となった.心臓カテーテル検査では肺動脈圧は78/22(43)mmHgと著明な上昇を示し,心係数は2.35 l/min/m2と低値であった.術後2カ月目には,右肺血流が改善され右心圧負荷は軽減(肺動脈圧54/22(33)mmHg)された.また心係数も3.43 l/min/m2と増加し,機i能的にはNYHA第1度までに回復しえた.術後1年経過した1990年6月現在,warfarin投与を行っており術後の再発もなく,患者は正常生活を送っている.
  • 平井 淳一, 伊部 直之, 青山 隆彦, 若杉 隆伸, 嵯峨 孝, 明石 宜博, 山崎 義亀與, 斉藤 和哉, 浜田 真, 本定 晃
    1991 年 23 巻 11 号 p. 1303-1309
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    40歳,女性.1989年6月上旬より38-39℃ の発熱,動悸,全身倦怠感を,7月下旬より呼吸困難,起坐呼吸を認め,8月18日症状増悪し入院.心拍数154/分,心胸郭比77%,断層心エコー図で多量の心嚢液貯留を認め,血圧は80/62mmHgに低下し,奇脈(吸気時に収縮期血圧が14mmHg低下)を呈しており心タンポナーデと診断された.緊急心膜穿刺にて血性心嚢液(細胞診class II,細菌なし)を約800ml排液後,心拍数125/分,心胸郭比68%に軽減し心嚢液貯留は消失していた.そして血圧は130/80mmHgに安定し症状も改善した.検査成績:WBC3,000/Mm3,Hb9.5g/dl,Plt6.3×104/mm3,ChE428IU/l,ICG60.72%,TP9.1g/dl,A/G0.46,HPT32%,TT30%,fT3 4.2pg/ml,fT4 2.35ng/dl,C3 45mg/dl,C4 14mg/dl,CH50 28.6単位,LEtest(+),抗核抗体1,280倍D,抗DNA抗体180 U/ml.甲状腺エコー;"慢性甲状腺炎"の像.肝生検;自己免疫性の慢性活動性肝炎.以上の所見よりSLE(自己免疫性の慢性活動性肝炎,慢性甲状腺炎の合併)と診断し,プレドニゾロン30mgとチアマゾール30mgの治療にて臨床症状,検査成績ともに改善した.血性心嚢液による心タンポナーデをきたしたSLE症例は,諸外国で8例,本邦で5例の報告しかなくまれと考えられた.
  • 組織像より見た発症機序に関する1考察
    藤本 欣也, 田形 雅通, 永尾 正男, 菅沼 秀基, 吉富 淳, 池谷 秀樹, 岡野 博一, 武井 秀憲, 安見 敏彦, 吉見 輝也
    1991 年 23 巻 11 号 p. 1310-1314
    発行日: 1991/11/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    73歳女性の外傷性大動脈断裂の剖検例を経験したので報告する.交通事故による頭部外傷,頸椎損傷にて脳外科入院となったが,入院時胸部X線にて縦隔・心陰影の拡大を認め胸部CTでは胸部大動脈に内膜剥離様の所見を認め,縦隔内には血腫がみられた.胸部外傷による胸部大動脈断裂と考え,保存的に降圧療法を開始したが,第14病日に突然左背部痛を訴え,直後よりEMDとなりCPRに反応せず,死亡した.剖検にて左鎖骨下動脈分岐部より約2cm末梢側で大動脈長軸にほぼ直角に断裂がみられた.縦隔内には著明な血腫を認め,左胸腔内には900ccの血液がみられた.組織では,断端部分には薄い肉芽組織が形成され,断端の弾力線維は内腔側に収束し肉芽に接する部分では線維の走行が乱れ,屈曲が著しくなっていた.以上の組織所見より力学的なねじれ(bending stress)と強い牽引力(shearing stress)が同部位に加わり,断裂が起きたものと考えられた.なお,発症当初,断裂は中膜までに留まったために即死を免れ,最後には外膜も断裂したために死に至ったものと思われる.
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