心臓
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症例 大動脈造影で偽腔を認めなかった大動脈解離によると思われる心タンポナーデの3症例
川村 満尾浜重 直久楠目 修吉村 公比古奥宮 清人平川 和彦北村 龍彦近森 正幸土居 義典小澤 利男
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1991 年 23 巻 12 号 p. 1403-1409

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抄録
41歳男・69歳男・75歳男の3症例.突然の胸痛で発症し,2例(症例2,3)では失神発作を伴った.昇圧剤に反応不良の低血圧と乏尿が遷延し,心エコー図・CTスキャンにて心タンポナーデと診断した.症例2では単純CTで上行大動脈壁に三日月状の高吸収域を認めたが,intimalβapや偽腔は3例とも明らかでなかった.発症4~24時間後に,心のうドレナージ術を施行,200~300mlの純血性心のう液を排液し,血行動態は安定した.来院の遅れた症例1では,高度の肝腎機能障害を呈していた.MRI(症例2,3:慢性期)や大動脈造影(症例1:急性期,症例2,3:慢性期)では偽腔は認めなかったが,2例(症例1,2)で大動脈弁逆流が存在し,うち1例(症例1)では15カ月後に弁置換術を行った際,冠動脈開口部直上に内膜破綻を確認した.いずれも画像診断上の確定診断は得られなかったが,突然の胸痛で発症した出血性心タンポナーデより大動脈解離が強く疑われた.発症早期からの心のう内への破裂または血液滲出と適度な血圧低下が解離の進展を防止し,一方,血圧低下と心のう内圧上昇の適度な遷延が出血を抑制し,解離部の血栓性閉塞を促したものと推定された.
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