心臓
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症例 貧血改善に伴う血行動態変化を観察した重度貧血心の1例
片岡 一西田 尚史西田 武史
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1991 年 23 巻 12 号 p. 1410-1415

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抄録

輸血にて心不全の顕在化した重度の慢性貧血心において,貧血の改善に伴う血行動態変化を観察した1症例を経験した.症例は50歳の女性で,婦人科にて子宮筋腫による重度貧血(Hb濃度一L6g/d1)を指摘され,200ccの輸血を受けたところ,起坐呼吸となり内科へ転科.内科での治療前血行動態は,末梢血管抵抗は著明に低下し(692dyn/s/cm-5),高心拍出状態で(7.4l/min/m2),中等度の肺高血圧(58/19mrnHg)を呈した.左室機能は,心仕事量の増大(77g×m/m2)にもかかわらず保持されていた.つまり左室拡張容量は軽度増大するも(108cc),壁運動は過動で,心収縮力は増大していた(%FS=48).濃厚赤血球輸血による貧血状態の改善に伴って,末梢血管抵抗はしだいに増加,正常化し,前述の血行動態異常も正常化した.血行動態の改善には,輸血に伴う血液粘度の増大による後負荷増加や,未知ではあるが,貧血時に分泌されるという強心物質の分泌抑制が関与していると推定される.貧血心に伴う心不全状態の診断に当っては,左心機能良好として安心せず,肺循環動態に十分注意し,場合によっては,右心カテーテル下に輸血を行うことも必要であろう.

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