心臓
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症例 大動脈弁閉鎖不全を合併する冠動脈瘻をMRIで確認しえた1例
橘 秀昭林 正博梅沢 裕美子山中 健長谷川 武志望月 衛伊藤 誠司今野 述田畑 裕横山 幹彦片桐 敬
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1991 年 23 巻 6 号 p. 641-644

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抄録
冠動脈痩はMuirらの報告によると剖検例22,500例中3例とまれな先天性心疾患とされている.筆者らはシネモード心MRIにより大動脈弁閉鎖不全(AR)を合併する冠動脈痩を確認できた症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は47歳,男性.喫煙20本/日,酒2合.父は心不全で死亡.川崎病の既往はない.昭和45年頃,境界域高血圧を指摘されるが放置.昭和62年5月健康診断で収縮期血圧180mmHg,心電図異常,心雑音,心胸郭比拡大を指摘されARの疑いで精査入院.入院時,検尿,血液一般異常なし.梅毒反応陰性.第3肋間胸骨左縁に拡張期雑音を聴取.心エコーおよび大動脈造影でIV&の大動脈弁閉鎖不全.冠動脈造影でseg6より分岐する3~4連の瘤を伴う冠動脈痩(肺動脈へ交通が示唆)と診断.心MRI検査で同部位に球状の冠動脈痩と思われる構造および肺動脈への血流を認め,胸部X線でも冠動脈痩に相当する小隆起が認められた.本症例は成因は不明であるもののARを合併する冠動脈痩であり,心MRIは非観血的に経過を追え,有用であると思われた.MRIで冠動脈痩を確認したとの報告は調べた範囲では,左回旋枝一冠静脈洞痩2例,左前下行枝一右心室痩2例と現在まで,3編のみであったがMRIの普及と共に増加するものと思われる.
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