抄録
1978年1月から1989年4月までの間に本院に入院した急性心筋梗塞855症例を対象に左室自由壁破裂(以下,心破裂)に関わる諸因子をinterventional therapyの導入による変化を中心に検討した.まず,重回帰分析の結果,年齢が高いこと,急性期の血行動態が悪いことが心破裂の発生に有意に関与していた.また治療法に関しては,interventional therapyにより心破裂の発生は有意に減少していた.PTCA群,ICT群は保存的治療群に比べて有意に心破裂の発生は低く,ICT・PTCA群も低い傾向にあったが有意差はなかった.とりわけPTCA群において心破裂の発生は低かった.重回帰分析の結果,心破裂の発生に最も大きく関与する因子は再疎通の有無であった.再疎通成功群は再疎通不成功群および保存的治療群に比べて有意に心破裂の発生が低かった.心筋梗塞の発症から心破裂までの時間に関しては,ICT群は保存的治療群に比して有意に時間が短く,ICT・PTCA群も短い傾向にあったが有意差はなかった.急性心筋梗塞の致死的合併症である心破裂の発生はinterven tionaltherapyの導入により有意に減少していることが示された.