抄録
症例は17歳,男性小児期より漏斗胸を指摘され,生下時より6歳頃まで泣くと口唇に軽度チアノーゼを認めた.12歳時,学校検診にて心電図異常を指摘され,当院小児科を受診.胸部X線より右縦隔腫瘍を疑われたが確診に至らず,経過観察されていた.またこの時,straight back syndrome,漏斗胸と診断された.昭和63年8月1日(17歳時),同じく心電図異常の精査のため当院内科を受診.胸部X線にて右肺門部に辺縁明瞭な腫瘤状陰影を認め,ECG上V1,2で深い陰性P波が存在した.胸部X線CT,心臓超音波検査にて腫瘤と心臓内腔との連続性が示唆され,MRIにて右肺門部より背側に向かって瘤状に拡張した左房と肺静脈の流入像を明瞭に描出し得た.以上より,straight back syndrome,漏斗胸に合併した左房瘤状拡張と診断した.Straight back syndrome,漏斗胸では心臓iの圧迫偏位による心陰影の異常をしばしば認めるが,本例のように右縦隔腫瘍のごとく右肺門部腫瘤陰影として左房の瘤状拡張を合併した報告はなく,きあめてまれな症例と思われた.また,その診断にはMRIが非常に有用であった.