心臓
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症例 僧帽弁収縮期前方運動と左室流出路狭窄を呈した甲状腺機能充進症の1例
竹下 聡山口 徹落合 正彦古田 裕子板岡 慶憲桑子 賢司一色 高明
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1992 年 24 巻 11 号 p. 1332-1336

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抄録

症例は64歳女性.労作時呼吸困難を主訴として当院へ入院.入院時,脈拍120/分,整.血圧132/68mmHg.胸骨左縁にLevine3度の収縮期駆出性雑音および心尖部に同3度の全収縮期逆流性雑音が聴取された. 内部分泌検査成績ではT S H 0 . 1 2 μ U / m l ,FT3 18.1pg/ml,T4 16.8μU/mlと甲状腺機能亢進所見が認められ,心エコー図では,僧帽弁の収縮期前方運動,左室流出路でのモザイク乱流パターン,僧帽弁前尖の逸脱,中等度の僧帽弁逆流が認められた.連続波ドプラ法より推定された左室流出路圧較差は約100mmHgであった.propranololおよび抗甲状腺剤の投与後,上記エコー所見は著明に改善した.甲状腺機能正常化後に施行した心臓カテーテル検査では,左室流出路の圧較差は認められず,亜硝酸アミルおよびisoproterenol負荷でも圧較差は誘発されなかった.左室造影では僧帽弁前尖への腱索の付着異常が認められ,収縮期にこの異常腱索が左室流出路側へとたわんで伸びているのが確認された.本例における一過性の左室流出路狭窄の出現機序には,僧帽弁前尖へ異常付着した腱索の存在に加えて, 甲状腺機能亢進症に伴うh y p e r c o n t r a c t i l e stateと乳頭筋機能不全が関与したと考えられた.

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