心臓
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公開シンポジウム「不整脈研究の最前線」心臓興奮伝導の光学的解析
心電活動のembryonic origin
神野 耕太郎
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1992 年 24 巻 2 号 p. 191-196

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抄録

膜電位感受性メロシアニンローダニン系色素とマトリックス型フォトダイオードアレイを受光素子とした光学的超多部位同時測定システムを用いて,発生初期の鶏胚の心臓における自発性活動電位の起源とその伝播パターンを光学的に解析した.
この方法により,6体節期および7体節期初期の鶏胚の未融合の心臓原基から,自発性の活動電位をはじめて測定することに成功し,心筋における自発性の電気的興奮能発現の個体発生的起源をつきとめることができた.心臓興奮の100~128チャンネルの同時記録のデータから,グラフ法を用いてペースメーカー領域の局在部位とその大きさを定量的に同定した.7~8体節期の心臓においては,ペースメーカー領域の位置は,一意的には決まらないが,9体節期に入ると左の心房原基に局在するようになる.一方,その大きさは,1,200~3,000μm2程度でほぼ一定であった.これは,ペースメーカー領域が60~150個の細胞から成るシート構造で構成されていることを示しており,発生初期の心臓においては,単一の細胞ではなく,自動能を持った細胞の集団がリズムを司るペースメーカーとして機能していることが明らかにされた.このペースメーカーに発する興奮波は,等速度で同心円状に心臓全体に伝播することも示され,これが心臓における興奮伝播パターンのprototypeであると考えられる.

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