我々は1980年から1981年の学校検診時に,断層心エコー検査を施行し,小学1年生158名中13名(小学生群),大学生265名中29名(大学生群)の僧帽弁逸脱症を診断した.今回,これらの僧帽弁逸脱症例を対象に7~8年後の追跡調査を行った.
電話による問診調査を全例に行い,さらに小学生群13名中9名,大学生群29名中16名に断層心エコー検査を施行した.そして左室長軸断層像での収縮期僧帽弁閉鎖所見を,逸脱の有無および逸脱の程度により4段階に分類し,前回と今回の僧帽弁閉鎖所見を比較検討した.さらに左室左房径の変化も比較した.
電話による問診調査では全例とも健在で,非定型的な胸痛を訴える1例を除き,胸部症状の訴えはなく治療も受けていなかった.
小学生群の断層心エコー図所見では,9例中4例に逸脱所見の消失を認め,3例で不変,2例に増悪所見を認めた.一方,大学生群では,16例中1例で逸脱所見の消失,2例で軽快,12例で不変,1例に増悪所見を認めた.
逸脱所見の消失例が多い小学生群では,左室,左房径ともに増大傾向を示したが,逸脱所見消失例が少ない大学生群では,左室,左房径ともに有意な変化を認めなかった.
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