心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
24 巻, 2 号
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
  • ビスダイアミン投与ラットの研究
    門間 和夫, 安藤 正彦, 伊藤 忠彦, 森 善樹, 山村 英司
    1992 年 24 巻 2 号 p. 123-129
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    ビスダイアミンを妊娠10日目のラットに投与し,妊娠満期(21日)に胎仔を帝王切開で取り出し,全身急速凍結法で固定した.凍結した胸部を凍結ミクロトームで横断面で切り, 0.5mm間隔で実体顕鏡でカラー写真に撮影した.この写真から先天性心疾患を診断し,計測を行った.40疋の妊娠ラットより生存率95%で300疋の胎仔の診断と計測が得られた.典型的なFallot四徴症が16%,漏斗部中隔が欠如し高度の肺動脈弁狭窄を合併するFallot四徴症が37%,肺動脈弁欠損を伴うFallot四徴症14%,総動脈幹症が18%,心室中隔欠損が3%,正常の心臓が12%であった.Fallot四徴症では共通して大きい膜様部の心室中隔欠損,大動脈の心室中隔への騎乗,右室流出路狭窄があり,肺動脈は肺動脈弁欠損例で著明に拡大していた.肺動脈弁欠損を伴うFallot四徴症で,心室の拡大と心筋量の増加,心嚢液貯溜があった.
  • 星野 智, 大川 真一郎, 今井 保, 久保木 謙二, 千田 宏司, 前田 茂, 渡辺 千鶴子, 嶋田 裕之, 大坪 浩一郎, 杉浦 昌也
    1992 年 24 巻 2 号 p. 130-135
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍の心転移はまれでないが生前診断は困難なことが多い.今回剖検例にて発見された転移性心腫瘍につき臨床病理学的検討を行った.1980年から1987年の連続剖検2,061例のうち肉眼的に転移性心腫瘍の認められた64例を対象とした.年齢は55歳から93歳(平均76.6歳),男39例,女25例であった.全悪性腫瘍は845例であり,心転移率は7.6%であった.原発巣は肺癌34例が最も多かった.心転移率は肺癌,胃癌などが高かったが,消化器癌では低かった.転移部位は心膜81.3%が最も多く,心内膜へ単独に転移した例はなかった.心膜へはリンパ行性転移が多く,心筋へは血行性転移が多かった.特に肺癌は心膜の転移,心房への転移が多い傾向にあった.心単独の転移はまれで55例は他の臓器へ転移が認められ,肺,肝,胸膜,骨に多かった.心電図異常所見は95%にみられたが,転移部位による特異性は認められなかった.しかし心膜転移例で心膜液量増加に伴い低電位差と洞頻脈が高率に出現してきた.悪性腫瘍を有する患者では常に心転移を念頭におき,注意深い臨床観察が必要である.
  • 中井 義廣, 片岡 善彦, 坂東 正章, 伊藤 健造, 日浅 芳一, 和田 達也, 大谷 龍治, 田畑 智継, 篠原 尚典, 相原 令
    1992 年 24 巻 2 号 p. 136-140
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    PTCA不成功例に対して,CABGを施行した44例の検討を行った.PTCA不成功後待期的CABGを行った32例をI群,緊急CABGを行った12例をII群とした.I群でのPTCA不成功の理由は,ガイドワイヤーの不通過が17例と一番多かった.II群で緊急CABGになった理由は,完全閉塞になったのが7例,左主幹部のdissection 2例,不安定狭心症化2例,心タンポナーデを起こしたのが1例であった.I群では,全例術前状態は安定していたが,II群では,12例中7例がショック状態にあった.12例中10例はカテーテル室より手術室へ直行した.そのうちの1例は,心臓マッサージをしながら手術を開始した.平均バイパス本数はI群2.78本,II群1.91本で,I群が有意に多枝であった(p < 0.01).手術死亡率はI群3.1%,II群16.7%とII群が高い傾向にあったが,PMIの発生率は差が認められなかった.IABPの使用はI群6.3%,II群66.7%とII群が有意に高率であった(p < 0.002).無輸血手術の行えた割合は, I 群5 9 . 4 % , I I 群8 . 3 % と有意差が認められた(p < 0.01).PTCA不成功例のうち,待期的CABGの行い得る症例は,通常のCABGと同様の成績が得られた.緊急CABGの必要な症例は術前状態が不安定なため,手術成績がやや不良であった.
  • 佐々木 弘子, 小川 聡, 岡野 信行, 末松 隆二, 須田 民男, 中村 芳郎, 山田 隆一郎
    1992 年 24 巻 2 号 p. 141-146
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    我々は1980年から1981年の学校検診時に,断層心エコー検査を施行し,小学1年生158名中13名(小学生群),大学生265名中29名(大学生群)の僧帽弁逸脱症を診断した.今回,これらの僧帽弁逸脱症例を対象に7~8年後の追跡調査を行った.
    電話による問診調査を全例に行い,さらに小学生群13名中9名,大学生群29名中16名に断層心エコー検査を施行した.そして左室長軸断層像での収縮期僧帽弁閉鎖所見を,逸脱の有無および逸脱の程度により4段階に分類し,前回と今回の僧帽弁閉鎖所見を比較検討した.さらに左室左房径の変化も比較した.
    電話による問診調査では全例とも健在で,非定型的な胸痛を訴える1例を除き,胸部症状の訴えはなく治療も受けていなかった.
    小学生群の断層心エコー図所見では,9例中4例に逸脱所見の消失を認め,3例で不変,2例に増悪所見を認めた.一方,大学生群では,16例中1例で逸脱所見の消失,2例で軽快,12例で不変,1例に増悪所見を認めた.
    逸脱所見の消失例が多い小学生群では,左室,左房径ともに増大傾向を示したが,逸脱所見消失例が少ない大学生群では,左室,左房径ともに有意な変化を認めなかった.
  • 高元 俊彦, 坂本 二哉
    1992 年 24 巻 2 号 p. 147-148
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 山辺 高司, 永田 正毅, 石蔵 文信, 赤池 雅史, 高垣 健二, 木下 修, 木村 晃二, 宮武 邦夫
    1992 年 24 巻 2 号 p. 149-155
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    僧帽弁狭窄症の治療法としての経皮経静脈的僧帽弁交連裂開術(PTCM)はバルーンの拡張により癒合した交連部を裂開するのがそのメカニズムである.今回,PTMC中のバルーン内圧を測定し,(1)交連部の裂開がどの程度の圧で可能なのか,(2)圧の上昇程度がPTMCの結果とどのように関係するのかという2点について検討した.対象はPTMCを施行した僧帽弁狭窄症18例で,PTMCには全例26mmサイズの井上バルーンを使用し,バルーン開大中の内圧を測定した.僧帽弁口面積およびエコースコアーは断層心エコー法により,僧帽弁逆流(MR)は左室造影像より評価した.対象18例の総エコースコアーは平均11.3で7から17の範囲にあり,バルーン開大中の最大内圧は平均2.47kg/cm2(2.Okg/cm2~2.95kg/cm2)まで上昇した.僧帽弁口面積は術前の平均1.1cm2から後2.1cm2へ増加し,術後弁口面積は全例で1.5cm2以上であった.バルーン内圧と総エコースコアーの問には正の相関関係(r=0.79)が,バルーン内圧と増加弁口面積の問には負の相関関係(r=-0.59)が認められた.III度以上のMRの発生は2例に認められ,いずれも弁尖部の亀裂によるものであった.今回対象とした程度の僧帽弁狭窄に対するPTMCではバルーン内圧3kg/cm2以下で十分な弁口面積を得ることができた.増加僧帽弁口面積はバルーン内圧が高くまで上昇した例ほど小さかった.
  • 経食道心エコー・ドプラー法による診断
    川野 成夫, 三神 大世, 菅原 智子, 橋本 雅幸, 沼澤 和典, 小野 欧美, 平林 高之, 安田 寿一
    1992 年 24 巻 2 号 p. 156-160
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    今回我々は,極めてまれな右房内に巨大動脈瘤を合併した右冠動脈右房瘻の1例を経験した.症例は44歳男性.第4肋間胸骨右縁の連続性雑音および心エコー図法上右冠動脈の拡張から右冠動脈右房瘻が疑われたが, 経胸壁心エコー図法では瘻の形態を分解明できなかった.経食道心エコー・ドプラー法では右房内の巨大動脈瘤の存在と短絡血流の経路を明らかにすることができた.以上の所見は冠動脈造影法や手術時の所見と合致した.
  • 今井 克次, 山田 真, 山下 宜繁, 朝日 通夫, 松島 由美, 永井 勝也, 根岸 宏邦, 岩井 泰博
    1992 年 24 巻 2 号 p. 161-165
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞症に類似した経過で急性期死亡し,生前の鑑別診断が困難であった巨細胞性心筋炎の1例を報告する.症例は70歳男性で,1週間持続する全身倦怠感,食思不振を主訴に入院した.病初期に一過性の発熱を認めたが,上気道炎症状や胸痛はなかった.入院時検査で心筋逸脱酵素の上昇とCRPおよび血沈の亢進を認めた.心電図ではII,III,aVF,V3からV6までのST上昇とII,III,aVFとV1からV3にかけて異常Q波を認め,心エコー図では,左室前壁および下壁領域に高度の壁運動低下を認めた.上の所見から,前壁から下壁にかけての無痛性急性心筋梗塞症と診断した.入院当日は安定していたが,2日目から急速に両心不全が進行し,集中治療に反応せず,入院3日目に死亡した.2日目の心電図は完全右脚ブロックに変化しており,II,III,aVFに異常Q波を認めた.心エコー図上,壁運動低下は左室全体から右室の一部に及び,前日に比しasynergyの拡大を認め,梗塞の拡大による心不全死と診断した.剖検では冠動脈に有意狭窄を認めなかったが,左室全体に心筋壊死巣が存在し,間質にリンパ球を中心とした細胞浸潤と多核巨細胞を認め,巨細胞性心筋炎と確定診断された.急性心筋梗塞症類似の経過で死亡した症例の中には,本疾患による死亡例も含まれている可能性を示す貴重な症例と考えられた.
  • 五十嵐 慶一, 堀本 和志, 竹中 孝
    1992 年 24 巻 2 号 p. 166-171
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は24歳の女性で,SLEの診断にて副腎皮質ホルモンの維持療法中に著明な心拡大を伴ううっ血性心不全を呈し,副腎皮質ホルモンの増量と利尿剤の投与により臨床症状の改善をみた.心エコー図検査と左室造影にて著明な左室内腔の拡大と左室壁運動低下を認め,拡張型心筋症様所見を呈していた.経過中,臨床症状は改善したが,左室壁運動の改善は認めなかった.急性期と1年後に両心室の心内膜心筋生検を施行し,SLE心筋炎と診断した.急性期には,右室壁は左室壁に比べて間質の細胞浸潤が顕著で,両室ともに間質線維化は軽度であったが,慢性期には左室壁の線維化が顕著となり,右室と左室で心筋炎の活動性の程度や炎症の治癒機転に差異があるように思われた.
  • 横式 尚司, 桜井 正之, 米田 恵理子, 吉田 泉, 安田 寿一, 酒井 圭輔, 松居 喜郎, 田辺 達三
    1992 年 24 巻 2 号 p. 172-177
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,女性.陳旧性心筋梗塞および肺結核による左肺全摘術の既往があり,心肺機能の著しい低下を認め,難治性の心室頻拍(VT)のために昭和51年より入退院を繰り返していた.電気生理学的検査(EPS)によるVTの誘発は不能であり,薬効評価や心内膜マッピングはできなかった.平成2年1月28日自宅にて意識消失し,心肺停止の状況で搬入されたが,心肺蘇生術を施行し数日後には後遺症なく回復した.薬剤抵抗性再発性VT,心停止の既往,VTの起源部位が不明な点より植え込み型除細動器(AICD)の植え込みが決定された.著明な心肺機能低下にもかかわらず,平成2年3月16日AICD植え込み術が施行された.術中および術後に明らかな合併症はなく,一時退院となった.約6カ月後に自宅で起こったVTに対してAICDが作動し,その有効性が確かめられた.
  • 中里 祐二, 羽里 信種
    1992 年 24 巻 2 号 p. 178-182
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例:61歳,女性.体重減少,易疲労感を主訴に入院.入院時の胸部X線にて右肺野異常陰影と心拡大を認め,心エコー検査で大量の心膜液貯留が確認された.心膜穿刺液の塗抹により結核菌が検出され肺結核に伴う結核性心膜炎と診断した.INH,SM,RFPの三者併用療法を開始したが,肺結核の改善はみられたものの心膜液減少傾向は認められず,プレドニゾロン40mg/日より投与を開始した.一時的に炎症反応の改善,若干の心膜液の減少がみられたが,プレドニゾロンの減量に伴い再び炎症反応の憎悪および心膜液貯留増加が認められるようになった.そこで,心膜穿刺排液,プレドニゾロンを80mg/日に増量した.その結果,心膜液はしだいに減少,血沈,CRPなどの所見も改善し,プレドニゾロンの減量でも特に異常を認めず,また,収縮性心膜炎への移行を思わせる所見もなく,以後順調に経過している.心膜液より直接結核菌が検出された結核性心膜炎の例はまれと考え報告する.
  • 柴田 健彦, 池田 こずえ, 長内 和弘, 小沢 竹俊, 久保田 功, 立木 楷, 安井 昭二
    1992 年 24 巻 2 号 p. 183-188
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    慢性肺気腫による慢性呼吸不全で在宅酸素療法中の患者において,慢性呼吸不全の急性増悪により,経過中に心電図上興味あるQRS変化をきたしたので報告する.症例は74歳男性で在宅酸素療法を受けていたが,呼吸困難,下肢の浮腫,心陰影の拡大が出現し呼吸不全の悪化として当科入院となった.標準12誘導心電図にて著明な右軸偏位,V1~3にQ波が認められ,V1のR波が増高し,V3~6のR波が減高した.ベクトル心電図では著明な右室肥大が認められた.気管切開後,低酸素血症,心陰影の拡大は改善し,それとともに標準12誘導心電図,ベクトル心電図も急性増悪前のQRSに回復し右室負荷は軽減した. 本症例は慢性閉塞性肺疾患などで酸素吸の管理が必要な症例における心電図変化の重要性を示唆するものと考えられた.
  • 心電活動のembryonic origin
    神野 耕太郎
    1992 年 24 巻 2 号 p. 191-196
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    膜電位感受性メロシアニンローダニン系色素とマトリックス型フォトダイオードアレイを受光素子とした光学的超多部位同時測定システムを用いて,発生初期の鶏胚の心臓における自発性活動電位の起源とその伝播パターンを光学的に解析した.
    この方法により,6体節期および7体節期初期の鶏胚の未融合の心臓原基から,自発性の活動電位をはじめて測定することに成功し,心筋における自発性の電気的興奮能発現の個体発生的起源をつきとめることができた.心臓興奮の100~128チャンネルの同時記録のデータから,グラフ法を用いてペースメーカー領域の局在部位とその大きさを定量的に同定した.7~8体節期の心臓においては,ペースメーカー領域の位置は,一意的には決まらないが,9体節期に入ると左の心房原基に局在するようになる.一方,その大きさは,1,200~3,000μm2程度でほぼ一定であった.これは,ペースメーカー領域が60~150個の細胞から成るシート構造で構成されていることを示しており,発生初期の心臓においては,単一の細胞ではなく,自動能を持った細胞の集団がリズムを司るペースメーカーとして機能していることが明らかにされた.このペースメーカーに発する興奮波は,等速度で同心円状に心臓全体に伝播することも示され,これが心臓における興奮伝播パターンのprototypeであると考えられる.
  • 臼井 支朗, 安野 尚史, 白川 正輝, 谷口 彰彦, 外山 淳治
    1992 年 24 巻 2 号 p. 197-200
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心筋組織たおける興奮伝搬過程を解析する上で,各細胞のイオン電流および活動電位発生のダイナミックスを含め,伝搬に主要な役割を果たす活動電位の立ち上がり部分を詳細に表現できる単一細胞モデルを用いたシミュレーション解析が有用と考えられる.我々は,不整脈などの興奮伝搬現象を解析するためには,生理的状態で測定された活動電位を定量的に表現できるモデルの構築が不可欠と考え,膜の保持電位を変化させ発生させた活動電位,およびそれらの微分波形に基づいてHodgkin-Huxley型Na電流モデルを構築した.さらに,このモデルにより興奮伝搬過程についても定量的表現が可能と考え,こうした視点から,モルモット乳頭筋標本における興奮伝搬波形を測定するとともに,一次元および二次元興奮伝搬モデルを用いてシミュレーションを行った.両者の比較の結果,1つの細胞が他の6つの細胞と結合した二次元hexagonal modelを用いることにより,実験結果をより定量的に表現できることがわかった. この場合のg a p c o n d u c t a n値も従来の生理学的知見を満足しており,hexagonalmodelの妥当性を確認した.
  • 平岡 昌和, 角南 明彦, 新田 順一, 小野 正博, 沢登 徹
    1992 年 24 巻 2 号 p. 201-205
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    単離モルモット心室筋細胞にパッチクランプ法を適用してNa電流と単一Naチャネル電流を記録し,I群抗不整脈薬の作用を検討した.Disopyramide・Lidocaineの使用依存性ブロック発現は遅・速2つの過程からなり,それぞれ荷電型と非荷電型がもたらしたが,荷電型か非荷電型かはチャネル親和性を決める唯一の決定因子ではないことが判明した.99%が荷電型を示すFlecainideは,活性化チャネルに親和性をもち,単一の遅いブロック発現過程を呈した.しかし,神経での説明とはことなり,細胞内投与は使用依存性ブロックをもたらさなかった.同様に99%が荷電型を占めるMexiletineは,遅・速2つの過程でブロックを生じたが,細胞内投与は効果が見られなかった.細胞接着型パッチにて細胞外にMexiletineを投与すると,単一チャネルレベルで使用依存性ブロックが発現し,それはnull-sweepの増加によることが判明した.また,チャネル抑制にはその開口を必ずしも必要としない.一方,細胞内膜側投与ではブロックは生じなかった.完全荷電型のYUTACは,活性化チャネルに親和性を持ち,平均開口時間を短縮させるが膜内側からはNaチャネルを抑制しなかった.以上より,荷電型薬物の心筋Naチャネルへの到達は細胞膜内側からではなく,外側または疎水性経路を介することが示唆された.
  • 大地 陸男
    1992 年 24 巻 2 号 p. 206-209
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心筋のL型Caチャンネルの修飾については,最近も多くの報告がある.β刺激の増大効果は,cAMP・Aキナーゼ系を介するリン酸化が主たる経路であり,Gsによる直接的な開孔促進効果は小さい.リン酸化されたチャンネルのゲート機構を単一チャンネル電流の解析で検討すると,ブランク掃引の減少,すなわち利用率が増大している.cGMPはGキナーゼを介してCa電流を減少するが増大する経路もある.Caチャンネルのゲート電流はD 600では刺激回数と共に減少し,ニトレンジピンでは電位依存性に減少した.
  • 中谷 晴昭, 武田 洋司, 當瀬 規嗣, 宍戸 由起子, 及川 由美子, 菅野 盛夫
    1992 年 24 巻 2 号 p. 210-214
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心筋細胞には少なくとも6種のKチャネルが存在し(IK,Ik1,It0,IK(Ach),IK(ATP),IK(Na)channel)生理的機能を果たしている.このうち主に電位依存性に活性化する3つのK電流,すなわち遅延整流K電流(IK),一過性K 電流(It0) および内向き整流K 電流(IK) に対するClass III抗不整脈薬の作用をパッチクラ法を用いウサギ心室筋細胞において検討した.ウサギ心室筋細胞のIKは比較的深い膜電位(-50mV)から活性化し,0mV付近で最大となるlow threold IKであるが,この電流に対して新しいClass III抗不整脈薬のsotalol,E-4031,MS-551はどれも明らかな抑制作用を示した.一方,It0,IK1に対してもMS-551とE-4031は抑制作用を示したが,sotalolはあまり抑制作用を示さず, 比較的IKに選択性の高いClass III抗不整脈薬と考えられた.このように,Class III抗不整脈薬の活動電位延長作用は主にIKに対する抑制作用に起因するものと考えられたが,他のK電流に対しても抑制効果を示すものも多く,今後これらの電気薬理学的特性と臨床有効性,副作用の発現等との関連性が明らかとなることが期待される.
  • 柳澤 輝行
    1992 年 24 巻 2 号 p. 215-221
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    イヌの冠動脈標本を用いて,fura-2により[Ca2+]1の変化を張力の変化と同時に測定し,KCl・アゴニスト収縮に対して種々のKチャンネル開口薬(KCO)の弛緩作用を検討した. アゴニストとしてはt h r o m -boxane A2類縁物質であるU 46619を用いた.静止時の[Ca2+]1減少作用はKCOの方がCa拮抗薬よりも明らかに大きかった.Cromakalimは30mMKCl収縮と[Ca2+]1を部分的に抑制し,その作用はglibenclamideにより完全に遮断された.KCOのKCl収縮抑制作用はその過分極作用により電位依存性L型Caチャンネルの脱活性化に由来し,U 46619の持続的な[Ca2+]1増加抑制作用も同様の機序による.さらにアゴニストのもう一方の収縮機構である筋小胞体からのCa遊離作用に対して,KCOは,IP3によるCa遊離を選択的に抑制し,caffeineによるCa遊離作用には影響しない.血管のATP感受性Kチャンネル(KATP)はβ細胞のそれとは異なるサブタイプである可能性が高い.現在知られているKCOは化学構造的に非常に多彩であり,Kチャンネル開口以外の作用を持ち得る.特に,nicorandilはnitro-glycerinと同様のnitrateとしての作用を併せもつKCOであり“N-K hybrid”と呼ぶことを提案する.最近,他のpyridine構造KCOであるKRN2391もN-K hybridであることが明らかとなった.KCOは,細胞や組織を明らかにCa拮抗薬と異なった機構で安定化する作用を持ち,人類が治療薬として持ち続けるべき薬物と考える.
  • 児玉 逸雄
    1992 年 24 巻 2 号 p. 222-227
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Vaughan Willams分類のクラス-I薬(Naチャネル抑制薬)は従来,主に心筋の活動電位持続時間(APD)に対する作用の差から,Ia,Ib,Icの3種類に細分類されてきた.この細分類は便宜的なものにすぎず,臨床における薬物使用の有用な指針となるには至っていない.我々は現在臨床で用いられている多数のクラス-I薬について,薬物と心筋Naチャネルの結合・解離動態に関する電気生理学的な実験を行い,新しい細分類を提唱するとともに,その臨床応用に関する考察を行った.
    モルモット右室乳頭筋標本と単離心室筋細胞の活動電位最大立ち上がり速度(Vmax)の変化を指標として,薬物によるNaチャネルブロックの使用依存牲(use-dependence)と状態依存性(state-dependence)を観察した結果,以下の2点が明らかとなった.(1)クラス-I薬はNaチャネルに対するuse-dependentblockの消退経過から,fast,intermediate,slowの3種類に細分類できる.(2)一方,チャネルの状態親和性の面からは活性化チャネルブロッカーと不活性化チャネルブロッカーに大別できる.これらの細分類は,頻拍の興奮頻度や期外収縮の連結期,不整脈発生部位の活動電位波形などに応じて,各薬剤を適切に使い分ける上での有用な指針となる可能性がある.
    Naチャネルに対して異なる結合・解離動態を示す薬物を併用した実験では,チャネル抑制効果が相加的に表れる場合に加えて,競合的拮抗による作用減弱や相乗効果による作用の増強が生ずる場合があることが明らかとなった.
  • 加算平均心電図を用いた抗不整脈薬薬効の臨床的評価
    加藤 貴雄, 早川 弘一
    1992 年 24 巻 2 号 p. 228-232
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    近年,高い有効性あるいは新たな作用機序をキャッチフレーズにした新しい抗不整脈薬が次々に開発される一方,CAST studyの結果,抗不整脈薬を長期に用いると却って突然死の頻度が増し,それが薬剤の催不整脈作用によるものらしいことが指摘され,心室性不整脈の内科的治療は新たな局面を迎えるに至った.すなわち,抗不整脈薬効果の予測あるいは催不整脈作用などの副作用発生の予知の重要性が高まってきたといってよい.
    本研究ではこれらの点の解明を目的に,各種抗不整脈薬投与前後に加算平均心電図を記録し,心室微小電位を含む心電図QRS高周波成分の変化と抗不整脈効果あるいは催不整脈作用発現との関連性を検討した. その結果, 1)class IaおよびIcの抗不整薬はQRS高周波成分,特に終末部の心室微小電位に大きな影響を及ぼしていること,2)class Ia,Icでは投与前のfiltered QRSが120 msec未満の例は全例有効,120 msec以上のほとんどの例で無効で,投与前の加算平均心電図所見から薬剤の有効性を予測できる可能性が示されたこと, 3)filtered QRS長度は無効例でより大であり,催不整脈作用発現に結び付く可能性があること,4)class Ib,II,III,IVでは,薬剤投与後の変化は小さく一定の傾向が見られず,この変化と薬剤の効果の間の関連性は明らかでないこと,などが認められた.
    以上より,加算平均心電図所見を参考にすることによって,抗不整脈薬の有効性あるいは催不整脈作用の発現を投与前に予測することがある程度可能になると考えられた.
  • 橋場 邦武
    1992 年 24 巻 2 号 p. 233-237
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    発作性上室頻拍(PSVT)の大部分の症例では一定のPSVTリエントリー回路が心臓中に組み込まれているので,これを臨床的に同定することも可能であり,したがって抗不整脈薬の作用機序や作用部位までも明らかにすることが可能となっている.PSVTに有効な多くの抗不整脈薬が開発され,これらの単独または組合せ投与によって,PSVTの停止や予防に対して有効な手段をとることができる状況にあるといえる.また,非薬物治療も進歩して,薬物治療に抵抗性の重症例に対する第二の治療法として確立されつつある.
    これに対して,発作性心房細動(PAF)の場合には一定の固有なリエントリー回路が恒常的に内在しているわけではないので,抗不整脈薬の薬理学的有効性をリエントリーの場において明確に同定することも評価することもできない.したがって,臨床的有用性も試行錯誤的に行われるのみであり,有効率も必ずしも十分に満足とはいえない現状である.また,非薬物治療も全く実験段階であり,将来的な可能性も確実なものではない.
    以上のような点から,PSVTよりもPAFの方が今後に多くの問題を残しているといえる.
feedback
Top