心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
臨床 実物大三次元像からみた胸部大動脈瘤の発生部位と成長方向
吉井 新平毛利 成昭神谷 喜八郎松川 哲之助上野 明
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 24 巻 4 号 p. 407-411

詳細
抄録
我々は大動脈弓の三次元構造から真性瘤や解離発生について検討している.今回X線CTにて3年間にわたり拡大の経過を追えた左側大動脈弓の胸部大動脈瘤2例を経験したので好発部位と成長方向に検討を加えた.症例1.73歳女,3年前に胸部大動脈瘤を指摘されCTを撮影,22,33カ月後に再撮影され順次拡大.症例2.78歳男,3年前に瘤を指摘され,15,29,39カ月後にもCTを撮影され瘤は拡大していた.方法はCT像の大動脈弓を透明シート上に実物大に拡大トレースしスライス幅に応じて積層することにより空間上に立体像を作成し観察した.次にこのシートを全て重ねることにより頭側よりみた大動脈弓の平面像を得,動脈瘤の拡大方向をみた.その結果上行弓部は左室から起始後1つの平面上で弧を描き,頸部主要3分枝をその接線方向に向かって出した後,下行弓部に移行するが,上行とは別な角度を持った平面で弧を描いていた.これを頭側より見ると上行と下行は左鎖骨下動脈起始後,左前方を突としたある角度をなしていた.瘤は上行弓部が作る平面の延長上の壁に向かって突出しはじめ,経時的にその方向に順次拡大し,ついでその対側や上下方向にも拡大を示した.すなわち左側大動脈弓では上行弓部と下行弓部は同一平面上になく,動脈瘤は上行弓部の延長上の壁に向かって成長する.以上,瘤の好発部位と成長の過程は弓部の三次元構築と密接に関連していることが示唆された.
著者関連情報
© 公益財団法人 日本心臓財団
前の記事 次の記事
feedback
Top