心臓
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24 巻, 4 号
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  • 谷 正人, 朝倉 靖, 新村 健, 海老原 良典, 半田 俊之介, 中村 芳郎
    1992 年24 巻4 号 p. 371-377
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    低酸素化前灌流が虚血心筋Ca2+代謝特にSRの機能に与える影響を検討した.[方法]ラット摘出心でKrebs-Henseleit液を用い37℃でLangendorff手技で灌流し20~50分間完全虚血後30分間再灌流した.対照群(C群)は95%O2/5%CO2で平衡とした酸素化液で虚血前40分間ならびに虚血後30分間灌流した.低酸素化虚血前灌流群(H群)では95%N2/5%CO2で平衡とした灌流液で10分間低酸素化虚血前灌流した.両群で虚血前,同終了時および再灌流終了時の心筋ATP,CP含量と,虚血ないし再灌流終了時の心筋45Ca2+摂取量を測定した.SRの鈍化は,その過程で大半の生理活性を失うため本研究ではSRの粗標本を調整しmitochondriaのCa2+摂取を抑制してSRの45Ca2+摂取能を求めた.[結果]群で虚血前,同終了時の心筋ATP,CP含量は低値であったが再灌流後の左室拡張期圧上昇はC群に比し軽度(2±1vs41±4mmHg)で収縮期圧に差はなく(59±5vs62±3mmHg),左室発生圧回復は著明に改善した(18±4vs60±6mmHg).虚血前・虚血中の心筋45Ca2+摂取量は両群で差がなく再灌流後にH群で著減した(5分:2.4±0.4vs1.5±0.3,30分:13.8±1.2vs2.9±0.3μmol/g dwt).虚血終了時のSRの45Ca2+摂取機能低下はC群で大で(28±7%vs58±7%)再灌流後の回復も著明に低下していた(59±5%vs83±9%).[総括]低酸素化液による虚血前灌流の心筋保護効果に心筋へのCa2+過剰流入減少に加えSRのCa2+調節機能保持が関与する.
  • 安孫子 保
    1992 年24 巻4 号 p. 378-380
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 鼠尾 祥三, 忠岡 信一郎, 井上 省三, 田中 淳二, 田村 敬二, 中村 節, 河原 洋介, 長谷川 浩一, 沢山 俊民
    1992 年24 巻4 号 p. 381-388
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Treadmill(T)運動負荷時にSTが0.1mV以上下降(ΔST≧0.1mV)したHNCM16例を対象に,運動時ST下降に対するverapamil(V)とpropranolol(P)の効果を検討した.
    T時間は無投薬時と両薬剤投与時で有意差はなかったが,運動時のΔST下降は無投薬時0.17±0.07mVに対し,V時は0.08±0.06mVと有意に改善し,P時は0.14±0.05mVと不変であった.運動時のPRP増加度は無投薬時とV時は同等であったが,P時は無投薬時に比し有意に減少した.ΔST/ΔHRは無投薬時2.3±1.0μV/bpmに対し,V時は1.2±0.9μV/bpmと有意に低値となったが,P時は無投薬時と同等であった.0.1mVΔST下降時の変動では,T時間は無投薬時240±95秒がV時は380±100秒と有意に延長し,ΔHRは52±14拍/分から65±12拍/谷と有意に増加したが,P時は無投薬時と同等であった.以上のように,運動時ST下降はV投与により改善したが,P投与では改善は得られなかった.これらの成績は,V投与による運動時ST下降の改善は心筋酸素供給の増加による心筋虚血の緩解によって生じたことをうかがわせる結果である.運動時の収縮期血圧上昇度(ΔSBP)が,無投薬時39±30mmHgに対してV時57±34mmHgと有意に増加したことも,虚血の改善などによって心機能が改善したことを示唆している.
    したがって,V投与による運動時ST下降改善は,心筋虚血改善によって生じた可能性が大きいが,伝導障害改善など他の因子の関与も否定できないと考えられた.
  • 吉村 光功, 佐藤 光, 立石 博信, 河越 卓司, 石原 正治, 村岡 裕司
    1992 年24 巻4 号 p. 389-395
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    対象は再疎通療法を施行した急性心筋梗塞症例のうち経過中,冠動脈バイパス術(CABG)施行例と院内死亡例を除外した468例である.それらの長期予後を左右する因子について検討し,その中でも待機的冠動脈拡張術(待機的PTCA)施行の有無と長期予後との関係については,詳細な検討を加えた.累積生存率は,低左心機能例,多枝病変でかつ完全閉塞を有する例で有意に低率であった.多枝病変例については有意ではないが生存率が低い傾向にあった.また待機的PTCA施行と長期予後との関係については,待機的PTCA施行例は,死亡率ならびに再梗塞率が低く,待機的PTCAが,致死的再梗塞を予防し生命予後を改善する可能性が示された.
  • 三浦 正次, 佐々木 聡, 佐竹 良夫, 平沢 邦彦, 舘田 邦彦, 神田 誠, 衣川 佳数, 小西 貴幸, 西川 俊郎, 堀江 俊伸, 荷 ...
    1992 年24 巻4 号 p. 396-404
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    最近,肥大型心筋症から拡張型心筋症様病態に移行する症例が報告されているが,我々はその移行が家族性に見られたと考えられる1家系を経験したので報告する.家族性心筋症5例のうち4例が死亡し,1例は肥大型心筋症から拡張型心筋症様病態への移行が確認され,剖検では心筋の錯綜配列が見られている.他の3例は,肥大型心筋症の時期は明らかでないが,死亡前は臨床的に拡張型心筋症様病態であり,剖検の行われた2例では心筋の錯綜配列が見られた.生存している1例は,現在も肥大型心筋症である.死亡した3例は,血清CPK,LDHの持続的高値を示し,いずれも発症から数年以内に死亡しており,心筋壊死が比較的急速に進行する予後不良の症例と考えられる.40歳代まで生存した1例と現在生存している肥大型心筋症の1例は,心筋逸脱酵素の高値は見られず,比較的予後良好の症例と考えられる.
  • 由谷 親夫
    1992 年24 巻4 号 p. 405-406
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 吉井 新平, 毛利 成昭, 神谷 喜八郎, 松川 哲之助, 上野 明
    1992 年24 巻4 号 p. 407-411
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    我々は大動脈弓の三次元構造から真性瘤や解離発生について検討している.今回X線CTにて3年間にわたり拡大の経過を追えた左側大動脈弓の胸部大動脈瘤2例を経験したので好発部位と成長方向に検討を加えた.症例1.73歳女,3年前に胸部大動脈瘤を指摘されCTを撮影,22,33カ月後に再撮影され順次拡大.症例2.78歳男,3年前に瘤を指摘され,15,29,39カ月後にもCTを撮影され瘤は拡大していた.方法はCT像の大動脈弓を透明シート上に実物大に拡大トレースしスライス幅に応じて積層することにより空間上に立体像を作成し観察した.次にこのシートを全て重ねることにより頭側よりみた大動脈弓の平面像を得,動脈瘤の拡大方向をみた.その結果上行弓部は左室から起始後1つの平面上で弧を描き,頸部主要3分枝をその接線方向に向かって出した後,下行弓部に移行するが,上行とは別な角度を持った平面で弧を描いていた.これを頭側より見ると上行と下行は左鎖骨下動脈起始後,左前方を突としたある角度をなしていた.瘤は上行弓部が作る平面の延長上の壁に向かって突出しはじめ,経時的にその方向に順次拡大し,ついでその対側や上下方向にも拡大を示した.すなわち左側大動脈弓では上行弓部と下行弓部は同一平面上になく,動脈瘤は上行弓部の延長上の壁に向かって成長する.以上,瘤の好発部位と成長の過程は弓部の三次元構築と密接に関連していることが示唆された.
  • 平松 祐司, 井島 宏, 三井 利夫, 堀 原一
    1992 年24 巻4 号 p. 412-416
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は42歳女性.高血圧の精査のため受診した際60mmHgの上下肢血圧差を認め,DSA,MRIにてpulmonary-ductus-descending aorta trunk(PDDT)を伴わない大動脈弓離断症または閉鎖症と診断した.大動脈は左鎖骨下動脈分岐部直下から約3cmにわたり索状構造を呈していた.左第4肋間開胸の上,径14mmのknitted-Dacronを用いて左鎖骨下動脈-胸部下行大動脈バイパス術を行った.術後上下肢の血圧差は消失し,十分な後負荷の軽減がなされた.
    従来,本例のような大動脈弓閉鎖症は,大動脈弓離断症の一部とされたり,大動脈縮窄症の極型とされたり,その立場が不明確であった.ここでは,大動脈弓離断症,閉鎖症および大動脈縮窄症を,発生学的背景を同じくすることから,大動脈弓狭部遺残症として1つの範ちゅうにまとめ,PDDTの有無,形態的特徴に着目した分類法について検討を加えた.
  • 坂本 喜三郎, 横田 通夫, 曲 人伸, 北野 満, 水原 寿夫, 中野 博行, 斉藤 彰博, 野島 恵子
    1992 年24 巻4 号 p. 417-422
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    患児は,10カ月,5.8kgの流入部のみの痕跡的右室を持つ純型肺動脈弁閉鎖症.34生日に左側modified Blalock-Taussig shuntと動脈管結紮術を施行し順調に退院したが,生後8カ月頃から四肢の浮腫を認め,10カ月時に高度の全身浮腫とチアノーゼで再入院となった.卵円孔開存(以下PFO)がφ1.8mmに狭小化し,8mmHgの圧較差を示すようになった事が状態悪化の主因であった.まだ乳児期であるため心房中隔欠損作成術を考えたが,Fontan型手術の条件をほぼ満足していたので,狭小化したPFOを逆に利用し,まず,巨大化した右心耳と主肺動脈を吻合した.これにより,狭小化したPFOを心房内遺残右→左短絡とみなす,8mmHgの肺循環駆動圧を持つFontan術後の循環動態を得,1週間後,バルーンカテーテルによるPFO閉鎖テストで確認してから,PFO閉鎖と三尖弁弁尖切除を施行し,乳児期Fontan手術を完了した.術後約2年を経過した現在,体重も約10kgに増加し元気に通院している.
  • 嶋津 ユミ子, 前田 利裕, 石田 哲也, 丹羽 裕子, 竹下 泰, 幸松 晃正, 原 政英, 犀川 哲典, 高木 良三郎, 伊東 祐信
    1992 年24 巻4 号 p. 423-427
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    右冠動脈左バルサルバ起始症は比較的まれな冠動脈解剖的起始異常であるが,本疾患が突然死,虚血ならびに梗塞発症に関連しているとの報告がされており,最近臨床的に注目されている.今回,私達は右冠動脈左バルサルバ起始症に急性心筋梗塞を合併した2例を経験したので報告する.症例1は60歳,男性.広範な後下壁梗塞例で入院時に心室性頻拍症を認めた.症例2は64歳,男性.急性期に,Killip分類III度の心不全を認めたが,慢性期では梗塞部位は限局性前壁で左心機能は良好であった.注目すべきは不整脈の出現で,症例1では心室性頻拍症の多発,症例2では心房細動の合併を認めた.右冠動脈左バルサルバ起始症に心筋梗塞を合併した際は,虚血ならびに梗塞巣の拡大に関与し,心機能を悪化させ,さらには不整脈の誘発等の原因となりうると考えられ,臨床的に注意すべき疾患と考えられた.
  • 佐藤 勉, 高柳 寛, 井上 晃男, 酒井 良彦, 林 輝美, 諸岡 成徳, 高畠 豊
    1992 年24 巻4 号 p. 428-435
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    左冠動脈主幹部狭窄による不安定狭心症があり,この部の閉塞で急性心筋梗塞を発症し,かつ待期的A-Cバイパス術を施行し得た若年例を経験した.症例は32歳男性で,昭和62年1月,軽労作で前胸部痛が出現し,運動負荷心電図で狭心症と診断され投薬を受けた.しかし胸痛は続き,精査のため同年2月20日入院した.安静時心電図は正常で,冠動脈造影上,左主幹部に99%狭窄と右冠動脈からの著明な側副血行路を認めた.2月23日急性心筋梗塞を発症し,ウロキナーゼ96万単位を静注した.1カ月後再度冠動脈造影を施行し左主幹部の閉塞を認め,左前下行枝ヘバイパス手術を行った.術後,側副血行路は消退し狭心症もない.本症例のごとく,若年者で左冠動脈主幹部閉塞によって急性心筋梗塞に移行する過程が観察された症例の報告はまれで,詳細を報告し若干の考察を加えた.
  • 白井 徹郎, 井上 清
    1992 年24 巻4 号 p. 436-441
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,女.Holter心電図にてMobitz II型房室ブロックを指摘され精査目的にて入院となった.Holter心電図では先行PP間隔により房室伝導態度は異なっており,洞調律時先行PP間隔が900msecより長い場合には1:1房室伝導が保たれていたが,それ以下では2:1房室ブロックが出現した.心房期外収縮時には比較的長い連結期のものではブロックされたが,連結期600msec前後では一過性に房室伝導が回復し,連結期500msecとさらに短縮すると再びブロックされた.電気生理学的検討では,洞調律時1:1房室伝導が保たれている時にはI度His束内ブロックを認め,自然にPP間隔が短縮した際には2:1His束内ブロックが生じた.さらに安定した遅い洞調律が持続した時期に早期心房刺激を挿入し房室伝導様式を観察したところ,連結期850-770msecではI度His束内ブロックを示し,760から450msecの問はHis束内ブロックによる房室ブロックが出現した.しかし連結期440から380msecの間では一過性に房室伝導が回復した.房室伝導回復時A2H2およびH2H2時間の突然かつ有意な延長は認めなかった.したがって本例の短い連結期での一過性の房室伝導の回復は,gap現象,機能的縦解離,第4相ブロックなどの機序では説明し得ず,真の過常伝導によると考えられた.His束内での真の過常伝導を電気生理学的検討およびHolter心電図により証明し得た症例は極めてまれと思われた.
  • 鹿野 泰邦, 山本 真根夫, 野澤 明彦, 西谷 隆宏, 大野 克幸, 山口 潤, 若林 淳一
    1992 年24 巻4 号 p. 442-445
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心臓原発悪性リンパ腫は,比較的まれな疾患であり,その報告は現在までに60数例を数えるにすぎない.今回我々は,チアノーゼを認め,検査にて右→左短絡を伴う心臓原発と考えられた悪性リンパ腫を経験したので報告する.患者は63歳主婦,労作時の動悸,息切れ,全身倦怠感等を主訴として入院.顔面やや浮腫状で口唇にチアノーゼを認めた.胸部X線でCTR62.9%と心拡大があり,胸部造影CTにて,ほぼ右心系に一致して広範に低吸収領域を認めた.上大静脈造影では,右房への流入はみられず,奇静脈が造影された.下大静脈造影では,右房より左房への短絡と右房内腔の狭小化を認めた.入院後,しだいに血液ガス所見の悪化をきたし,第34病日に死亡.剖検では,表面に多数のポリープ状突起をもった腫瘍が右房内腔全体を占め,かつ広範な心筋への浸潤を認めた.さらに直径約5mm程度の卵円孔の開存も認めた.組織所見はmalignant lymphoma,diffuse medium sized cell typeであり,心臓以外の臓器への浸潤は軽微であった.
  • 催不整脈作用との関連
    井上 博, 山下 武志, 杉本 恒明
    1992 年24 巻4 号 p. 447-456
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Rosenbluethらのイヌ心房粗動モデルを用いて,興奮旋回性頻拍に及ぼす抗不整脈薬の効果を検討した.本モデルでは心房粗動中に興奮伝導遅延部位は低位右房に存在し,抗不整脈薬はこの部位に選択的に作用して粗動を停止した.高頻度心房刺激による粗動誘発時に,一方向性ブロックは低位右房に出現し,同部位では分界稜あるいは太い櫛状筋がその筋線維の方向が興奮前面を横切るように存在する.本実験モデルでは,低位右房の特微的な解剖学的構築が興奮旋回の発生・接続および抗不整脈薬の薬効と深く関連している.抗不整脈薬の主たる電気生理学的作用は不応期延長と伝導抑制である.本モデルで検討した結果,III群薬は不応期延長効果が大きく,興奮間隙を消失することにより興奮旋回を停止した.Ia,Ic群薬では,興奮間隙は消失せず,伝導抑制により興奮旋回が停止することが示された.興奮間隙を広げるIc群薬投与後に粗動再誘発率が高く,伝導抑制の強い薬剤は,興奮旋回発生の解剖学的基盤がある場合,安定した興奮旋回路を形成しやすく,これが本薬剤の催不整脈作用と関係していることが推測された.
  • 堤 健
    1992 年24 巻4 号 p. 457-470
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    抗不整脈薬の催不整脈作用を,主に心室性不整脈発生の立場より検討することを目的に以下の実験を施行した.1)Csの選択的冠動脈灌流による不整脈の誘発.2)50Hzトレイン刺激による心室細動誘発条件とそれに対する抗不整脈薬の効果.3)Purkinje-心室筋接合部(P-Mj部)の正/逆伝導様式に対する抗不整脈薬の修飾.4)digitalis,低K,低Mg2+による異常自動能に対するI群薬剤の作用.5)P-Mj部の電気的結合の不均一性と,それに対するI群薬剤の作用1)~5)の実験により,催不整脈作用の発現は,異常自動能に加え,心室内伝導に対するI群薬剤の関与が推定された.すなわち不応期延長効果を有する薬剤投与下に生じる不整脈の持続には,伝導の安全率低下により発生するfacilitated reentryが関与する可能性が高いことを実験的に示した.また電解質異常やdigitalis,hypoxiaと抗不整脈薬の組合せは,伝導の不連続性や不均一性を増大せしめ,異常自動能の誘発に加えて催不整脈作用の促進因子となり得ることを示した.
  • 伊東 盛夫, 高橋 尚彦, 藤野 孝雄, 石田 修二, 犀川 哲典, 有田 眞
    1992 年24 巻4 号 p. 471-482
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    家兎を用いcaesium chloride(Cs)により誘発される心室性不整脈の発生機序とこれに対するニコランジルの効果について検討した. 1) in vivo の実験:家兎の体表面心電図と左室内膜のmonophasicaction potential(MAP)を同時記録しながら,Cs(1mM/kg)を20分間隔で3回反復静注した.CsはMAPにearly afterdepolarization(EAD)を誘発し,心電図ではtorsade de pointesに類似した多形性心室頻拍(PVT)のみならず単形性心室頻拍(MVT)をも発生させた.MAPのpremature activityのtake-off potentialは,PVTではEADのピークであり, MVTでは活動電位の4相であった.Overdrive pacingはPVTを抑制したがMVTを促進した.ニコランジル(0.2mg/kg,i.v.)の前投与は,EAD振幅とVTの発生頻度を抑制した.2)家兎の摘出乳頭筋標本の実験:Cs(5-7.5mM)は細胞内活動電位持続時間(APD)を延長させEADを誘発した.ニコランジル(500μM)は,CsによるAPDの延長を抑制しEADを消失させた.Cs長時間(120分以上)作用後,静止電位が減少し(約-60mV),train刺激によりtriggered activity(TA)が誘発された.TAの自然停止直後にdelayed afterdepolarization(DAD)が記録された.脱分極がさらに進行すると持続性自発興奮が発生し,この持続性興奮はpostdrive accelerationを示した.以上の成績より,1)ニコランジルは心筋のKコンダクタンスを増加させることにより,CsによるEADとVTを抑制したと考えられる.また,2)PVTの機序はEADであるが,MVTの発生には脱分極誘発異常自動能とDADが関与していると推測される.
  • 野田 剛毅, 畑 忠善, 佐伯 知昭, 西村 昌雄, 渡部 良夫
    1992 年24 巻4 号 p. 483-489
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    強心配糖体によるウサギ洞結節細胞の自動能亢進への筋小胞体Ca放出機構の関与を,微小電極法および二重微小電極法を用いて電気生理学的に検討した.筋小胞体Ca放出チャネルの遮断剤であるrya-nodine1μM単独灌流により拡張期脱分極相が抑制され,自発興奮頻度は毎分204±18から181±14へ減少した.1および3μMのacetylstrophanthidin(AcS)灌流により自発興奮頻度はそれぞれ11.4%,23.3%増加し,活動電位振幅とVmaxは減少して,その活動電位波形は振動様となった.しかし1μMのryanodine処置下では,AcSは灌流初期約1分間,自発興奮頻度を一過性に増加させた後減少に転じさせた.また,その際振動性活動電位は観察されなかった.電圧固定実験では,1μM AcSは歩調取り電位域内(-60~-30mV)の脱分極で発現する内向き電流を増加させたが,-20mV以上の電位では内向き電流を減少させた.また3μMのAcSにより明らかな一過性内向き電流(TI)および一過性外向き電流(TO)が発現した.しかしながら,ryanodine存在下ではAcSはすべての電位で内向き電流を減少させ,TIとTOを発現させなかった.以上の結果から,AcSによる歩調取り電位域内における内向き電流の増加とTIおよびTOの誘発はryanodine感受性の筋小胞体Ca放出機構に依存し,この機構が強心配糖体の洞結節自動能亢進作用に主役を演ずるものと結論された.
  • 第2テーマ:催不整脈薬の薬理作用
    1992 年24 巻4 号 p. 490-505
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
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