抄録
症例は59歳,女.Holter心電図にてMobitz II型房室ブロックを指摘され精査目的にて入院となった.Holter心電図では先行PP間隔により房室伝導態度は異なっており,洞調律時先行PP間隔が900msecより長い場合には1:1房室伝導が保たれていたが,それ以下では2:1房室ブロックが出現した.心房期外収縮時には比較的長い連結期のものではブロックされたが,連結期600msec前後では一過性に房室伝導が回復し,連結期500msecとさらに短縮すると再びブロックされた.電気生理学的検討では,洞調律時1:1房室伝導が保たれている時にはI度His束内ブロックを認め,自然にPP間隔が短縮した際には2:1His束内ブロックが生じた.さらに安定した遅い洞調律が持続した時期に早期心房刺激を挿入し房室伝導様式を観察したところ,連結期850-770msecではI度His束内ブロックを示し,760から450msecの問はHis束内ブロックによる房室ブロックが出現した.しかし連結期440から380msecの間では一過性に房室伝導が回復した.房室伝導回復時A2H2およびH2H2時間の突然かつ有意な延長は認めなかった.したがって本例の短い連結期での一過性の房室伝導の回復は,gap現象,機能的縦解離,第4相ブロックなどの機序では説明し得ず,真の過常伝導によると考えられた.His束内での真の過常伝導を電気生理学的検討およびHolter心電図により証明し得た症例は極めてまれと思われた.