1992 年 24 巻 6 号 p. 651-659
虚血性心疾患における心筋虚血誘発試験としてのイソプロテレノール(ISP)負荷試験の有用性を運動負荷(エルゴメータ)試験を対照としてジピリダモール(DP)負荷試験のそれと比較検討した.
対象の内訳は冠動脈造影上有意狭窄を有する労作狭心症67例,X症候群22例,異型狭心症17例,非定型的胸痛34例の計140例であった.ISP負荷はISPを0.02μg/体重kg/分で3分間静注し,以後3分ごとに漸増し,負荷中止点は運動負荷に準じた.DP負荷はDP0.56mg/体重kgを4分間で静注するものとした.心筋虚血の判定は心電図上のST変化によった.
労作狭心症群での負荷揚性率はISP負荷90%(運動負荷93%)に対し,DP負荷47%(運動負荷85%)であり,X症候群でのそれはISP負荷78%に対し,DP負荷0%であった.他の病型では両薬剤負荷の間に成績の差を認めなかった.重篤な不整脈の出現はいずれの負荷試験でも認めなかった.
以上より,労作狭心症においても,X症候群においても,心電図上の心筋虚血発現頻度はISP負荷がDP負荷よりも高く,両負荷試験の臨床的意義には差異があると考えられた.