1992 年 24 巻 6 号 p. 660-665
アドリアマイシン(doxorubicin)の心毒性の機序について種々の可能性があげられているが,その1つに細胞内カルシウム過負荷がある.今回,乳頭筋をプログラム電気刺激してregular contractionと筋小胞体機能に依存するmaximum postextrasystolic potentiation(PESP)を作成し,アドリアマイシンの筋小胞体への作用を検討した.アドリアマイシンはregular contractionに比較するとPESPを著明に時間依存性に抑制した.アドリアマイシンの心毒性の原因のひとつである細胞内カルシウム過負荷の機序に筋小胞体機能不全が関与していると推察された.臨床で,アドリアマイシン心筋症の発現の早期発見にPESPの減弱の有無の検討が有用であろう.