心臓
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症例 急性心不全で発症した多発性筋炎の1例
徳部 浩司外村 洋一木村 義博木村 忠司師岡 公彦松永 敏郎宮山 東彦石原 明渡辺 進
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1992 年 24 巻 7 号 p. 834-839

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抄録

症例は41歳,男性.微熱,夜間呼吸困難,全身倦怠感および著しい下腿浮腫を訴え入院となった.両下肺野に湿性ラ音を,心音ではIII音,IV音と収縮期駆出性雑音を聴取した.両大腿に軽度の圧痛はあったが明らかな筋力低下は認められなかった.白血球12,700/mm3,血沈1時時間値32mm,CRP33.5mg/dlと炎症所見を認め,CPKは2,144IU/lと上昇していた.心胸郭比64%,心電図は洞性頻脈で肢誘導の低電位,I,aVL,V4~V6でST低下を認めた.心臓超音波検査,左心室造影でび漫性の壁運動の低下があり,左室心筋生検では炎症細胞浸潤と心内膜の軽度線維化がみられた.これらの所見より急性心筋炎とそれに伴う心不全と判断した.心筋炎の原因として当初ウイルス感染を最も疑ったが,入院後,咀嚼時筋痛と両大腿の脱力感が出現,CPKもMM型優位と判明し,さらに大腿四頭筋生検で炎症細胞の浸潤と局所的な筋線維の壊死を確認,以上から本症例は多発性筋炎で心筋炎はその一合併症であると診断した.ステロイド剤投与により臨床症状および諸検査はすみやかに改善し良好な経過を呈した.心電図も正常化し心筋の収縮不全も消失した.
多彩な臨床症状を呈する多発性筋炎が急性心不全で発症することを示した貴重な症例である.

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