心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
臨床 上室性不整脈に対するアプリンジンの効果
主に慢性呼吸器疾患患者および高齢者を対象として
小西 與承上田 英之助上村 博幸重藤 紀和尾藤 慶三
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 25 巻 1 号 p. 25-33

詳細
抄録

心機能抑制と抗コリン作用の弱いIb的利点と心房筋にも有効な特性を合わせ持つアプリンジン(Apr)を取り上げ,副作用の少ない上室性不整脈治療薬の観点から効果を検討した.対象を上室性不整脈を有する慢性呼吸器疾患患者および高齢者とし,それを取り扱う機会の多い国立療養所18施設の参加を得た.
抗不整脈薬治験に一般的な観察項目に,対象患者の疾患特徴を観察するため,呼吸機能を加えた.評価対象として採用された症例は男性31,女性36の計67例で,平均年齢68.7歳であった.上室性不整脈の種類と各例数は期外収縮(SVPC)59,発作性心房細動(PAf)9,心房細動(Af)6,発作性房室頻拍(PSVT)9であり,48例に心室性期外収縮の合併を認めた.
Apr投与により,SVPCは5,655±5,146/日から1,479±2,260/日へ,PAf+PSVT発作回数は3.22±3.51回/日から0.59±2.08回/日へと減少した(各p<0.001).「著明改善」+「改善」を改善度とすると,不整脈改善度79%,全般改善度82%の良好な成績であった.
血液ガスデータがPO2 46.0mmHgやPCO2 99.8mmHgのごとく極端に悪い症例でも著効が得られ,呼吸機能低下例でも有効性は落ちないことが判明した.著明改善群でのApr血中濃度の多くは0.5μg/ml付近に集中し,この濃度は1日30~40mgの経口投与で十分達せられた.肝機能障害発生率は9%で休薬で回復した.
アプリンジンは慢性呼吸器疾患患者と高齢者の上室性不整脈にも有効な治療薬である.

著者関連情報
© 公益財団法人 日本心臓財団
前の記事 次の記事
feedback
Top