心臓
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症例 心室中隔欠損閉鎖術後12年目に発症し,パッチ上に疣贅形成を認めた黄色ブドウ球菌性心内膜炎の1治験例
谷口 昌史西尾 夏人上野 康尚堀田 成紀久保 実大木 徹郎坪田 誠関 雅博
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1993 年 25 巻 10 号 p. 1193-1198

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抄録

症例は14歳男児.2歳8カ月時に心室中隔膜様部欠損に対しパッチ閉鎖術を施行された.
平成3年5月,不明熱の精査目的で入院したところ,咽頭培養と血液培養で黄色ブドウ球菌が検出され,断層心エコー図で心室中隔パッチ上に疵贅の付着を認めた.抗生剤投与により解熱し,疵贅の縮小とエコー輝度の増強を認めた.13週間後に抗生剤を中止したが16週間目に発熱し,血液培養で再び黄色ブドウ球菌が検出された.その後は抗生剤投与に反応せず,疵贅は拡大傾向を示し,肺塞栓症の合併も認めたため,手術的に切除した.疵贅は2.0×1.8cmでパッチと連絡があり,中隔壁は著明に肥厚していた.同時にVSDの完全閉塞も確認された.
VSD術後遠隔期の感染性心内膜炎の頻度は少なく,完全閉鎖の確認された報告は極めてまれである.また黄色ブドウ球菌を起炎菌とし,パッチ上に疵贅形成をきたした報告はない.

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