心臓
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研究 心筋梗塞心と“正常”心とにおける右房・左房機能の比較
野田 俊之荒川 迪生高屋 忠丈長野 俊彦加川 憲作三輪 啓志西垣 和彦平川 千里
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1993 年 25 巻 12 号 p. 1369-1376

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抄録

[目的]右房・左房造影像より心房容積を計測し,“正常”心および心筋梗塞心の右房・左房機能を研究した.[方法]シリコンラバーを用いて右房16個・左房10個の鋳型を屍体心より作製し,正・側2方向X線撮影を行い,Simpsonの公式を用いた方法で容積を計測した.心臓カテーテル検査法にて“正常”心機能を有する7例(“正常”心群)と左室駆出分画が0.55未満に低下した陳旧性心筋梗塞患者8例(心筋梗塞心群)に右房・左房造影を施行した.心房容積を20-40msecごとに計測し,右房・左房容積-時間曲線を描いた.[結果]Simpsonの公式を用いた方法で計測した鋳型容積は,水置換法により測定した容積とよく相関した(右房;r=0.992,p<0.01,左房;r=0.995,p<0.01).“正常”心群においては,心房最大容積および心房収縮開始直前の心房容積は右房・左房問で有意差を認めなかったが,右房駆出量は左房駆出量より有意に大きかった.“正常”心群と心筋梗塞心群とを比較すると,心房最大容積および心房収縮開始直前の心房容積には右房・左房ともに有意差を認めなかったが,右房駆出量,左房駆出量,左室1回拍出量に対する右房・左房駆出量の割合は心筋梗塞心群が“正常”心群より有意に増大していた.[結論]“正常”心群では右房駆出量は左房駆出量よりも大きく,また,陳旧性心筋梗塞心群では右房・左房ともに心房駆出量が増加している,という事実関係を認めた.

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