心臓
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研究 不安定狭心症における安静時心電図変化とその診断的意義の検討
大和 眞史勝木 孝明大村 延博安 隆則仲田 郁子藤井 幹久児玉 和久岩村 文彦斎藤 宗靖
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1993 年 25 巻 12 号 p. 1377-1383

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抄録

[背景]不安定狭心症の冠動脈病変や短期予後の予測に関し,治療反応性,緊急冠動脈造影所見,発作時や運動負荷心電図が有用であるが,それらは初期診断に用いることはできない.そこで,初診時安静心電図の診断的意義を検討した.[方法と結果]Braunwald分類(1989年)に該当する不安定狭心症61例を対象とし,入院時安静心電図所見から,STT変化を示した41例(変化群)とST-T変化のない20例(変化なし群)に分類した.最終発作から平均4.2±4.3日目に施行した冠動脈造影所見を検討した.変化群は変化なし群に比べて,やや高齢で,最終発作から心電図記録までの日数は短く,入院前に遷延発作を有した患者が多かった.また多枝病変,複雑病変または血栓を多く認めた.冠スパズムは変化なし群に多い傾向であった.安静心電図において陰性T波かST変化を示した場合,多枝病変診断の感度60%・特異度84%,複雑病変または血栓に関して感度51%・特異度85%であった.変化群は左室壁運動異常を多く認め,最終的な治療として冠動脈形成術(32例)を選択する頻度に差はなかったが,冠動脈バイパス術(13例)を選択することが多かった.変化群で陰性T波のみを示した13例とST低下の28例との間には差がなかった.[要約]安静心電図でST-T変化を有する不安定狭心症は,多枝病変や複雑病変を有する可能性が高く,血行再建を要する症例が多い.

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