1993 年 25 巻 12 号 p. 1391-1396
心筋梗塞発症後の回復期の冠状動脈造影で有意狭窄を伴わない心筋梗塞症患者16例(男13例,女3例,平均年齢52±9歳)に対し,アセチルコリンによる冠攣縮誘発試験を行った.1例が心房細動を,1例が糖尿病を,2例が高脂血症を合併していた.喫煙歴を有するものは11例であった.心筋梗塞発症前に狭心症の既往があるものは19%と極めて少なかった.75%の例で冠状動脈の攣縮が誘発され,6例で1枝,2例で2枝,4例で3枝全てに誘発された.梗塞の責任血管で攣縮を起こしたのは6例であった.4例では急性期にも冠状動脈造影を行ったが,慢性期の誘発試験では4例とも閉塞部位と全く同じ部位では攣縮はみられなかった.攣縮の誘発率は下壁梗塞に比し前壁梗塞で多く,また高齢者に高い傾向があった.また右冠状動脈に起こりやすかった.