心臓
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臨床 心筋梗塞超急性期の増高T波の臨床病態
西上 和宏早崎 和也庄野 弘幸本田 俊弘牧 明松田 宏史本田 喬
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1993 年 25 巻 3 号 p. 272-278

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抄録

目的:心筋梗塞超急性期にみられる増高T波の臨床的意義を明らかにすること.
対象と方法:発症2時間以内に心電図が記録され,急性期冠動脈造影(CAG)が施行された急性前壁梗塞患者53例を対象とし,超急性期の心電図変化と梗塞前狭心症歴および冠動脈造影所見との関連について検討した.また,急性冠閉塞のモデルとして,狭心症患者23例を対象に左冠動脈前下行枝に対する経皮的冠動脈形成術(PTCA)中の心電図変化と狭心症歴および術中対側造影による側副路の有無との関連について検討を行った.
結果:心筋梗塞超急性期の心電図変化と記録された時間の関係では,増高T波を呈する例とST上昇のみの例との間に有意差は認められなかった.増高T波を呈する例は増悪型不安定狭心症から心筋梗塞になった例が63%,CAG上不完全閉塞または側副路のある例が94%とST上昇のみの例の場合と比較し有意に多かった(p<0.05). PTCAによる冠閉塞モデルにおいては,増高T波を呈した例はPTCA前に30回以上の狭心症発作があった例が86%,対側造影上側副路のある例が75%とST上昇のみの例の場合と比較し有意に多かった(P<0.05).
結論:増高T波は心筋梗塞超急性期に常に出現するわけではなく,その形成には中等度の虚血や反復する虚血発作の関与が考えられた.

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