1993 年 25 巻 3 号 p. 324-329
症例は68歳男性,22歳満州に居留中,肺炎に罹患後,労作時に軽度の息切れがあり,心臓弁膜症と言われたがとくに治療は受けなかった.昭和62年肺炎を契機に発症した心不全にて,当院を受診した時に心臓陰影に一致した石灰化像を指摘された.その後も心不全症状が持続するため精査を行った.腎機能正常,血清カルシウム,リンは正常範囲内,好酸球増多なし.胸部X線にて心拡大と左室に対応する部位に石灰化が認められた.心電図で著明な左室肥大とV4~6のT波逆転あり,心エコー図,胸部CT,MRIで石灰化の場所は左室心尖部および左室流入路で心内膜に接していた.心筋の菲薄化や心外膜の石灰化はなかった.ドプラ心エコー図,心機図から拡張障害が示唆され,心内膜心筋線維症が疑われた.このような症例はまれであり,文献的考察を加え報告した.