1994 年 26 巻 Supplement1 号 p. 131-138
狭心症における交感神経系の障害について,MIBG心筋SPECTを用い検討した.対象は胸痛を伴う心疾患14例.方法は,全例に安静時に123I-MIBGを投与し初期像と後期像を撮像.MIBGとは別に,14例中10例に運動負荷Tl心筋SPECTを,不安定狭心症4例に安静時Tl心筋SPECTを撮像.それぞれ左室を7区域に分け,集積の程度を視覚的に4段階に分類し評価した.MIBG心筋SPECTはwashout rateも算出した.運動負荷例ではTl心筋SPECTにて有意冠動脈病変21枝中18枝領域(38区域)に虚血を認め,MIBG心筋シンチでは初期像で21枝中19枝領域(36区域)に,後期像で21枝領域すべて(42区域)に集積低下を認めた.運動負荷未施行例では安静時Tl心筋シンチで梗塞部を除いた部位における有意冠動脈病変5枝中3枝領域(4区域)に集積低下を認め,MIBG心筋シンチでは初期像,後期像とも5枝領域すべて(9区域)に集積低下を認めた.MIBGのwashout rateは,正常心筋領域で25±8%,虚血領域で40±21%,梗塞領域で69±26%であり,それぞれの群間で危険率1%以下で有意差を認めた.以上の結果より,梗塞部位のみならず反復する心筋虚血によっても交感神経系の障害が存在することが示された.また安静時MIBGは心筋虚血の検出率が高く,運動負荷が困難な心筋梗塞急性期や不安定狭心症例においては特に有用と思われた.また,washoutrateを併用することにより心筋のviabilityの評価も可能であると考えられた.