1995 年 27 巻 5 号 p. 426-431
61歳,男性.著しい心不全症状に加え,完全房室ブロックを伴う急性心筋炎の疑いで入院.体外式ペースメーカーを挿入するとともに心不全治療が開始された.心症状出現8日目の心生検にて,著しいリンパ球浸潤と心筋細胞の融解・消失化が認められ,本症と診断された.心不全は順調に改善したものの,発症約2カ月後も高度房室ブロックが遷延したため,体内式ペースメーカーの植え込み術が施行された.発症約7年後の心エコー図では,壁運動異常はないものの,同じく約7年後の心電図にて洞調律時,心室内伝導障害を残し,また高度房室ブロックが残存し,心筋炎による後遺症としての伝導障害がなお遷延していることが明らかとなった.心筋炎では不顕性の発症例がみられることがあり,したがって本症例のごとく壁運動異常を呈さず,房室ブロックのみを示す症例の中に心筋炎が存在する可能性があり,今後その病因の鑑別には心内膜心筋生検を含めた詳細な検討が必要と思われた.