心臓
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研究 特発性房室ブロック50症例の心筋病変について
右室心内膜心筋生検による検討
植村 晃久森本 紳一郎平光 伸也久保 奈津子木村 勝智大槻 眞嗣清水 恵輔渡邉 佳彦菱田 仁山田 健二伊藤 昭男関口 守衛
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1995 年 27 巻 9 号 p. 782-790

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抄録

房室伝導障害を主徴とする症例では,刺激伝導系にのみ病変が存在すると考えられがちであり,心筋病変についての系統的な検討は少ない.そこで今回多数の房室伝導障害例を対象に組織学的に詳細に検討し,心筋病変について分析するとともに,心筋炎の存在についても検討した.対象は原疾患が明らかでなく,2度あるいは3度の房室ブロックを呈した50例(AVB群)で,右室より心生検を行い,光顕下で組織学的に検討した.なお生検材料は1例あたり平均3.8個採取した.対照として正常剖検心12例(N群)の組織標本を用い,これらの右室生検該当部位を,1例につき無作為に5カ所(1カ所は半米粒大の大きさ)選択し,同様に検討した.心筋炎の診断にはDallas criteriaを用いた.心筋細胞横径はAVB群15.4±4.1μm,N群11.7±3,1μmで,AVB群が有意に大きかった.線維化面積率もAVB群10.1±6.7%に対し,N群5.1±2.0%と有意差がみられた.また400倍視野における平均リンパ球数はAVB群の1.9±1.6個に対し,N群は1.3±0.4個で有意差がみられた.その他AVB群では,錯綜配列が8列(16%),心筋細胞の配列の乱れが39例(78%),融解~消失化が23例(46%),核の変形が21例(42%)にみられた.また50例中3例(6%)が心筋炎と診断された.
房室伝導障害例では,心室筋にも高率に病変を有することが明らかとなり,6%例で心筋炎の存在が確認された.

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