心臓
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症例 一過性の冠動脈病変を合併した成人川崎病の1例
早河 秀治加藤 敏行神田 裕文鈴木 正之高橋 慎司沼田 時男
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キーワード: 川崎病, 成人, 冠動脈病変
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1996 年 28 巻 10 号 p. 814-819

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抄録

20歳以上の成人で発症した川崎病は16例と少ないため,急性期に冠動脈病変を合併した症例の臨床経過については今までに報告されていない.我々は急性期に一過性の冠動脈拡大とうっ血性心不全を合併した成人例を経験したので報告する.
症例は発熱にて発症し,頸部リンパ節腫脹を除く川崎病の5主要症状を呈した20歳の男性である.第5病日にうっ血性心不全のため心原性ショックに陥ったが,川崎病の主要症状の消退とともに心不全も第9 病日までに軽快した. 第6 病日の心電図で,II,III,aVF,V3~V6でinverted T waveを認め,断層心エコー図で左室駆出率は48%に低下していた.第14病日の断層心エコー図で左冠動脈主幹部に内径7mmの拡大性病変を認めたが,右冠動脈および左室駆出率は正常であった.左冠動脈主幹部の拡大性病変は第42病日までに内径4mmへ消退し,第44病日の選択的冠動脈造影により左冠動脈優位型を示す正常冠動脈を確認した.
小児では内径7mmの冠動脈拡大は心後遺症を残す危険性が高いが,成人では左冠動脈主幹部で平均4 - 4 . 7 m m と小児より冠動脈が発達しているため,成人の冠動脈病変の診断には新たな基準が必要であると考えられた.

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