1996 年 28 巻 12 号 p. 973-976
症例は21歳,男性.オートバイによる交通外傷で,左側血気胸,右側血胸の診断,加療を受けた.血気胸は改善したが,10日後,ショック状態となり右心不全症状が増悪したため,当院救命救急センターへ転院した.高度三尖弁閉鎖不全症と診断し,受傷後2週目に準緊急的に手術となった.中等度低体温人工心肺下にて,右房を開けてみると乳頭筋が右室起始部より完全に断裂していた.三尖弁形成術不可能と診断し,三尖弁置換術を施行した.術後経過は順調で,退院し元気に社会復帰している.このような病態での三尖弁閉鎖不全症は比較的まれであると思われたので報告する.