心臓
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症例 高速螺旋CTにて血栓の消失を確認し得た肺塞栓の1例
東川 昌仁金盛 俊之山下 滋夫吉田 道明中村 保幸木之下 正彦新田 哲久高橋 雅士相模 龍太郎
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1996 年 28 巻 12 号 p. 983-987

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抄録

症例は71歳の男性で,労作時呼吸困難を主訴に来院.低酸素血症,心電図上のV1~3の陰性T波の出現,心臓超音波所見での右心系の拡大を認め急性肺塞栓を疑った.肺血流シンチで左右両肺の広範囲多発性陰影欠損を認めた.胸部の高速螺旋CT検査では左右肺動脈内に塞栓子が描出され肺塞栓と確定診断し,直ちにヘパリンとウロキナーゼを投与した.経過は良好で,肺血流シンチの追跡でも陰影欠損領域は著明に減少した.同時に行ったCTにて血栓はほぼ溶解し消失しているのを確認し得た.
最近,CTの肺塞栓に対する診断面での有用性が論じられている.特に短時間で安全に行うことができる高速螺旋CTは1スライスの投影時間が1秒以内であるため,塞栓子の大きさや性状までを詳細に描出できる.したがって,肺動脈造影や肺血流シンチグラムの代用法となる可能性は大きい.更に,経済性にも優れているので血栓の定期的な経過観察にも有用と思われる.
今回,高速螺旋CTが早期診断と経過観察に非常に有用であった肺塞栓の1例を経験したので報告する.

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