心臓
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症例 洞調律回復時に著明な洞停止を呈した心房細動を伴うバセドウ氏病の1症例
北川 泰生渡辺 直也尾崎 正憲稲本 真也名村 宏之栗本 泰行山田 重信
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1996 年 28 巻 2 号 p. 144-149

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抄録
心房細動を伴うバセドウ氏病で,硫酸キニジンによる除細動時に2回にわたり著明な洞停止を呈した1症例を経験した.症例は労作時呼吸困難と動悸を主訴とした56歳の女性で,甲状腺機能亢進と心房細動,心拡大,下肢の浮腫を認めた.血液学的検査,甲状腺シンチよりバセドウ氏病と診断した.心臓超音波検査では,軽度の僧帽弁逆流と三尖弁逆流を認めた.入院時ジギタリス剤とβプロッカーを用いたが,頻拍性心房細動が持続し心不全の増悪を認めたため,甲状腺機能が改善していない時点で硫酸キニジンによる除細動を行った.除細動後,房室結節性調律と心室性期外収縮の二段脈および各々約7秒と約11秒の著明な洞停止を認めた.QTc間隔は0.55秒と延長を認めたが,洞停止時のキニジン血中濃度は治療域以下であった.除細動後,心不全の改善と弁逆流の軽減を認めた.甲状腺機能がほぼ正常化した時点でのキニジン投与下の電気生理学的検査では,洞不全の所見を認めなかった.本例の洞停止の発生にはキニジンによる影響も否定できないが,甲状腺機能亢進症が主に関与した可能性が考えられた.甲状腺機能亢進症に伴う心房細動の除細動では,キニジン等のIa群薬の使用およびその施行時期についで慎重に判断する必要がある.
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