1996 年 28 巻 8 号 p. 672-675
一般的に慢性に経過する僧帽弁狭窄症に対し,緊急開心術を必要とした症例を経験した.
症例は32歳の男性で外国人労働者として来日していた.10年前より軽度の心不全症状を呈していたが安静により改善したために,特に治療は受けていなかった.このような軽度の心不全症状で長期間ほぼ無治療状態であった僧帽弁狭窄症に心房細動と肺高血圧が増悪原因と考えられる重篤な急性心肺不全を生じた.呼吸,薬物療法など内科的保存的治療を行ったが,循環動態が維持できずPCPSを導入し循環補助を行った.その後にPCPSからの離脱が困難と判断し,緊急開心術を施行した.手術は直視下交連切開術,左房内血栓摘除術を施行し経過は良好で退院した.
慢性的に経過する僧帽弁狭窄症においても,急性増悪する心不全症状に対し積極的な保存的治療で改善傾向をみない症例に対しては,緊急開心術による治療法の選択も必要と考えた.