1996 年 28 巻 8 号 p. 696-699
Screw-in leadにより約14年間の心房ペーシングを施行し得た洞機能不全症候群の1剖検例を経験した.症例は80歳男性で,64歳頃より徐脈および頻脈を伴う動悸・息切れを自覚し,66歳時には約10秒間の失神発作を主訴に精査目的で当科入院.洞機能不全症候群の診断のもとに,ペースメーカー植え込み術を施行した.急性期および漫性期の刺激閾値・心房電位などの各測定値に問題はなく,経過は良好であったが,術後約14年でleadの断線が認められ再度入院.この際,左上葉肺癌と診断されたが,長時間の心停止などの重篤な所見は認められず,患者の生命予後と考え合わせ,leadの修復は施行しなかった.その後,徐々に全身状態が悪化し,肺炎を合併,呼吸不全で死亡した.剖検では,lead先端は,線維弾性組織により被包され,強固に心房壁心内膜下へ固定されていた.本例の臨床経過および剖検所見は,心房screw-in leadの良好な長期信頼性を支持する所見である.