心臓
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症例 肺動脈血栓内膜摘除術が著効を示したプロテインC欠損症を有する慢性肺血栓塞栓症の1例
岡野 嘉明馬場 健中山 泰徳中川 毅佐藤 徹京谷 晋吾中西 宣文吉岡 公夫国枝 武義川口 章安藤 太三高本 眞一由谷 親夫大原 知樹南都 伸介
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1996 年 28 巻 8 号 p. 700-707

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抄録

肺動脈血栓内膜摘除術が著効を示した慢性肺血栓塞栓症(CPTE)の1例につき報告する.症例は26歳の男性で,プロテインC欠損症による血栓性素因を背景に有し,骨折による長期臥床という誘因が加わって,下肢深部静脈血栓症次いで肺塞栓症が発症し,臨床症状を示すことなく徐々に高度な肺高血圧症が完成し,右心不全症状が顕在化するに至って診断されたCPTEの典型例であった.肺動脈造影に加えて血管内視鏡による直視的観察を併用することにより,病変の形態からみて手術が可能と確診できたため,本邦では経験の少ない体外循環下,正中切開による両側肺動脈血栓内膜摘除術の適応とされた.両側とも広範囲に器質化血栓および内膜を摘除することができ,術後の心肺運動負荷試験により,画像診断所見や安静時の血行動態のみならず自覚症状と運動能力の著しい改善も確認された.運動耐容能も含めて客観的に本手術法の有効性を示した報告は本邦初であるが,先天性凝固異常合併例に対する手術例の報告は世界的にも少ないため,今後も厳重な経過観察を要する.

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