心臓
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症例 心雑音が診断のきっかけとなった腫瘍の圧排による右室流出路狭窄の1例
寒川 昌信肥後 敦子谷口 真田辺 潤松島 敏春
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1997 年 29 巻 2 号 p. 161-166

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抄録
患者は心雑音の精査目的で入院した前縦隔腫瘍を有する70歳の男性である.臨床経過と検査成績から,縦隔腫瘍は左下肢足底部皮膚癌からの転移によると考えられた.入院時,第2肋間胸骨左縁で振戦を伴う駆出性収縮期雑音を聴取した.心エコー図による観察では,前縦隔に位置する腫瘤は前胸壁および右室前面に浸潤し,右室壁を圧排することにより右室流出路は著しく狭小化していた.また右室圧負荷所見もみられたことから,本症例の収縮期雑音の起源は前縦隔腫瘍の圧排・浸潤によっておこった右室流出路狭窄によると診断した.心臓腫瘍は種々の臨床症状をひきおこすが,縦隔に遠隔転移したと考えられる悪性腫瘍が心外膜側から右室を圧排し,右室流出路狭窄をきたすことは極めてまれである.
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