急性心筋梗塞の急性期に再灌流療法に成功した19症例において,BMIPP心筋シンチグラム(BMIPP), T1心筋シンチグラム(T1)所見および左室壁運動の発症6カ月後までの回復様式を比較検討した.また,BMIPPの経時的変化に影響を及ぼす種々の因子についても検討した.
6例でBMIPP集積異常の回復は,T1,壁運動の改善に比し同時か遅れて確認された(I群).また7例はT1,壁運動の改善にもかかわらず,6カ月以上BMIPPの回復がみられなかった(II群).
BMIPPの回復過程には再灌流までの時間とともに急性期のmax CPK, max LDH,ミオシン軽鎖,T1等で間接的に表される心筋虚血の程度が関与していた.すなわち,BMIPPの回復を認めたI群では,早期再灌流により心筋虚血が軽度であった例が多かった.一方,T1と壁運動の回復にもかかわらずBMIPPが改善しないII群では,冠血流の再疎通が遅れ心筋虚血がより高度であった例が多かった.
また19例中13例において,急性期にT1より高度なBMIPPの集積低下がみられた.その乖離は早期再灌流されBMIPPが改善したI群で著明で,6カ月後には縮小傾向を示した.逆にII群では,T1とBMIPPの乖離は6カ月の経過で拡大した.
以上より,慢性期における心筋脂肪酸代謝の良好な回復のためには,早期の再灌流が必要であることが示唆された.また,心筋脂肪酸代謝の評価において,再灌流時期の判定・心筋虚血の程度の評価・より長期間の経過観察・T1との乖離の追跡が重要であると考えられた.
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