抄録
心臓交感神経活性の臨床的指標として用いられている血漿ノルエピネフリン濃度(pNE),心拍変動解析(周波数解析における低周波数成分),123I-meta-iodobenzylguanidine(MIBG)心筋シンチグラフィの関係を211人の対象で検討した.24時間ホルター心電図を記録し周波数解析を含めた心拍変動解析を行い,123I-MIBG心筋シンチグラフィではMIBGの早期・後期心集積とその間の消失率を定量評価し,MIBG投与直前には末梢静脈血を採取しpNEを測定した.その結果,低周波数成分を含めた心拍変動はMIBG後期心集積と正の相関,MIBG心消失率と負の相関を示した.pNEはMIBG後期心集積と負の相関,低周波数成分を含めた心拍変動と負の相関,およびMIBG心消失率と正の相関を示した.しかし, これらはR2<0.2と弱い相関であった.より,心臓交感神経活性の上昇はMIBG心消失率の充進や低周波数成分を含めた24時間心拍変動の低下として反映される可能性が大きいと考えられる.透析患者で心拍変動とMIBG心筋シンチグラフィを行った結果では,交感神経系の興奮と副交感神経系の機能低下が示され,心臓自律神経異常が尿毒症性心筋障害より早期に存在し,その進行とともに心筋障害が進展する可能性も示唆された.このように,心拍変動とMIBG動態の解析は心筋障害の病態に対する新たなアプローチを可能にすると期待される.