心臓
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解説 ATP感受性カリウムチャネルとischemic preconditioning
水村 恒雄斎藤 穎小沢 友紀雄上松 瀬勝男Garrett J Gross
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1997 年 29 巻 7 号 p. 576-582

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抄録

心筋にあらかじめ1回ないし数回の短時間の虚血を与えておくと,その直後の長時間の虚血に対して耐性を獲得し心筋梗塞サイズが縮小することが動物実験で発見され,この現象をischemic preconditioning(PC)と呼ぶ.この効果がATP感受性カリウム(KATP)チャネルの特異的阻害薬であるglibenclamideにより打ち消され, KATPチャネル開口薬がPC類似の心筋保護作用を示すことから,その成立機序にKATPチャネルが重要な役割を果たしていると考えられている.一方,KATPチャネル以外のアデノシン,ブラジキニンなどの内因性物質もPCの成立に重要であり,なおかつKATPチャネルとも密接な関わりを持つことがわかってきている.今後,KATPチャネル開口薬の臨床への積極的な応用,つまり狭心症および心筋梗塞の治療,バイパス手術,心臓移植における心筋保護などへの利用が期待されている.そこで,本稿ではKATPチャネルがPCにおいて果たす役割について最新の知見を示し解説する.

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