1982年1月から1994年12月までの13年間に東京都CCUネットワークに収容された急性心筋梗塞9,525例と狭心症3,287例のうち,発症状況が明らかな急性心筋梗塞9,525例と狭心症1,043例を対象とし,発症状況,特に発症時間と発症時の身体活動について検討した.急性心筋梗塞は男に多く(75.1%),発症年齢は男は60歳台(22.2%),女は70歳台(9.7%)に多かった。死亡率は1982年の20.4%から1994 年の11.5% へと低下した. 急性心筋梗塞の月別発症率は12 月に最も多く(11.4%) , 次いで3月に多かった(11.0%).曜日別の検討では土曜日に発症する例が最も多く(16%),次いで月曜日(15%)であった.急性心筋梗塞の発症時間は,午前9時前後と午後9時前後の二峰性の分布を呈し,午前6時から午後0 時までに31.5% が発症していた. 狭心症の発症時間は午前8時前後と午後8時前後の二峰性に分布し,急性心筋梗塞の頻発時間帯の約1時間前であった.急性心筋梗塞の発症は睡眠中15.6%,食事中・直後11%,安静中10%などの2MET以下の軽労作中での発症が59%,狭心症も同様に軽労作中の発症が70.3%を占めていた.一方,6MET以上の労作中での急性心筋梗塞と狭心症の発症はそれぞれ5.1%, 3.3%であった. このように急性心筋梗塞や狭心症の発症には日内変動が認められ,また比較的軽度の身体活動を契機に発症する例が多いことから,急性冠症候群の発症の予防には冠危険因子の除去は勿論,日常生活態度の改善,常日頃の適度な運動,さらに日内変動を考慮した時間治療学の活用が必要であると考えられた.
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